こういう考え方があることは知っておくべきである。広瀬隆氏しかり副島隆彦しかり。あとは、自分の感覚で世界を観る。テレビや新聞だけを情報源にしていたのでは世の中はなかなか分からない。「日本はアメリカの属国」も「日本とアメリカはパートナー」も同じこと。いずれにせよ、真実はひとつしかない。
副島氏の仕事については、レビューにあるように好き嫌いがはっきり分かれる。しかし私は個人的には好きである。<P>確かに、陰謀論的な匂いもするし、断定的で敵を作りやすい書き方をする人ではある。しかし、逆に考えれば欧米人と異なり、日本人は陰謀論的な発想をあまりにも禁避しすぎるのではないか(東京裁判などは「陰謀論」以外のなにものでもないのを見よ)。またある人から見れば鼻持ちならない論争的なスタイルも、知はまさに戦場であるといった著者の覚悟の現れと見れば、小気味よいものであるようにさえ私には映る。<BR>また、著者が果たした米国政治分析の重要性は誰も認めざるを得ないだろう。<P>本書で著者は「政治と経済は互いに貸借をとりあってバランスする」という持論をいつもながら、強力!に現実に対してあてはめる。米日の短期的経済関係は、①日本はアメリカの属国であること②日本は120兆円以上の米国債を買い込まされているということ、以上の重い現実の中で推移するのである。そして著者は長期的に見れば、このような経済体制は市場(神の手)の復讐を受け、崩壊すると説く。このような巨視的な立場からダイナミックに経済を語れる人物が日本に他にいるだろうか。<BR>確かに本書はそれまでの副島氏の議論を知るものにとっては、特別新しい知見はないように見える。しかし副島氏のスタンスは、この激動の数年間でも大筋においてきわめて一貫しているため、副島初心者も十分に楽しめる一冊であろう。
落とし穴を知らない者は、落ちてからでなければ、その落とし穴があることに気がつかないー山本周五郎の言葉だが、この本はその落とし穴に<P>気づかせてくれる。驕り高ぶった著者、論理薄弱は理論展開、怒鳴りまくっている文体、欠点だらけの本だが、その一点でカバーしてあまりある。ただ、結論部分は貧困にあえぎながら夢見ているのは若者だけではない中高年にも愛の手をがほしかった。これは個人的にだけど。