私はかなりのマンガ好きなのですが、実は絵柄があまり好みでないという理由から岡崎さんのマンガを読んだことがなく、この「ヘルター・スケルター」が初めて読んだ作品でした。そしてその圧倒的な面白さ、すごさに吹っ飛ばされました。<P>主人公・りりこの激しく凄まじい欲望、走って走って走り続けなければいてもたってもいられない焦燥感、希望、苦しみ、悲しみ。<P> 恐ろしく、美しく、目を背けたくなるけれどどうしても目が離せない、そんな思いで何度も何度も読み返しました。彼女のパワーは奇形と呼べるほど突出したものですが、私も含め、ほとんどすべての女性の中にはりりこが住んでいる気がします。一度でも「美しくなりたい」「もっともっと何かが欲しい」「幸せになりたい」と思ったことがある!の中には…。「プチ整形」や「ダイエット」情報が全盛の今だからこそ、なおさら多くの人にぜひ読んで欲しいと思う作品です。<P> この物語は一応「完結」という形になっていますが、できることなら、「その後のヘルター・スケルター」が読みたい。サブキャラクターも様々な過去や厚みを感じさせる人物ばかりで、彼らが主人公になった「外伝」も読んでみたい…などと切望しています。岡崎さんの一日も早い回復をお祈りします。
天才マンガ家・岡崎京子の超問題作。ついに刊行であります。その昔、「ヘルタースケルター」というタイトルの映画がありました。カルト殺人者チャールズ・マンソンがビートルズの同曲よりインスピレーションを受けて、あの大量殺人を行なう、という内容。もちろんこちらは、そんな物語ではありません。でもなにかが近いのです。一種呪いじみたことば「ヘルタースケルター」に引きずり出されたかのような、底無しの欲望が渦巻く、力強く恐ろしい物語。こんな作品、ぜったい岡崎さんにしか描けやしない。
岡崎京子は欲望を書かせたら<BR>稀代の名手だが,<BR>本作品では大衆の欲望の視線にさらされ,<BR>その中で損なわれるものを余すところなく描き出している。<P>そこなわれたものは永遠に回復されないのかというテーマを<BR>救いをこめて問うた1冊。