前著、「死体は生きている」「死体は語る」のなかでも、男女の情事の末に・・・といういくつかの具体的検死例が挙げられていたが、そのなかでも男女の生前の関係について著されたのが本書だ。上野正彦氏は世界でもはじめての「腹上死」の研究者として論文も発表されている、現在、世界でもあまり例が少ないらしく、世界中の研究者から引張りだこだそうだ。映画、TV化された「失楽園」でも最後のシーンにおいて著者の見解を大いに活用したようだ。著者も30年間現役を勤めてきた時代と現代とでは、「死体」からみられる生前の「ものの考え方」にギャップを感じると感想を述べている。前著でも述べられていたが、監察医の仕事は「死後(死体になってしまった人)の人権を護る」ことだという、死体から悟らされるメッセージを生ある人間と荒廃しきった現社会へ伝えている上野氏の仕事(功績)に賞賛を贈りたいと思う。
そこには、社会的経歴も何もない、ただ一人の人間だった遺体を多数扱ってきた著者による、心中や精神障害などの遺体に関する記述を多数紹介されています。死体というものに対して、何の区別もなくただ”死に方・死んだ状況”を重視して語られているのが、これまで読んだ本ではなかったので、印象が強かったです。<P>誰にでも必ずおとずれる”死”について、見方が変わる一冊になるかもしれません。