ドラッカーの本は好きで、何冊か読んでいるが、本書の要旨は「明日を支配するもの」とほとんど同じと感じた。企業家精神がいちばん顕著なのは間違えなく韓国、日本の官僚の先延ばしはいままで成功してきた、などの新鮮な指摘は面白かったが、全体的に、最近の本ですでに書かれていることが多く、昔のドラッカーの本のもつ重厚感にかける。そして、各章ごと重複する内容が多く、各章間のつながりがよく見えず、構成に問題がある。同じ老大家でも今読んでいる、Chandler(2001) "Electronic Century"の方が気迫に満ちている。
でも,素晴らしいです。92歳の人物が書いたとは思えません。<BR>ただ,ドラッカー本人の今までの実績の焼き直しという感は否めません。人口移動態の変化・企業の社会における関わり方等帯の書き下ろし最新作というフレーズは少々厳しいかも知れません。<P>ただ,それだけに過去のドラッカーの著作を読んでいない方は,必読です。彼の実績を鳥瞰することが可能な書物です。こんなことを40年以上前から指摘し続けているという事実こそがドラッカーの偉大さそのものです。<BR>読んで損したとは決して思わないでしょう。<BR>未来はすでに起こったことから始まるのです。そのヒントがここにはあります。
本書のテーマの一つは知識社会の到来。しかし知識を明在知に限定していることと知識労働者の定義が曖昧であることによって論理展開が危うくなっている。これは非常に残念。またドラッカーにとっては常識的かもしれないが、根拠を示さずに展開している部分がかなり見られる。<BR> 一方、IT革命を産業革命と対比して論じ、産業革命において鉄道が人々の世界観を変えるほどのインパクトを与え新しい社会を到来させたように、eコマースが社会を変える触媒になるとしている。このような視点は、凡百のビジネス書を圧倒的に凌駕する。<BR> さらに対比による思考は、頻繁に用いられており、本書の大きな特徴となっている。例えばグーテンベルグの活版印刷を蒸気機関やコンピュータの登場に、ルターの聖書の印刷鉄道やeコマースに対比して、最終的には国民国家の形成を準備したと論じている。私のHP「ビジネスパーソンの常識と非常識」に、さらに解説している。