時の人にはついぞケチをつけたくなる性分だがなぜかこの人だけはケチつけられない。というよりもうここ3年彼に注目している。去年新車を買ったが日産以外は考慮だにしなかったということは、彼は相当ブランド価値を創造しているのだろう。<P>彼のどこに惹かれるのか、それは彼こそエリートと呼ぶに相応しい強靭な知性と決断力を持っているからだ。クラウゼヴィッツが生きていたらアレクサンダー大王と並び称したかもしれない・・・本書はこんな像をくっきりと浮かび上がらせてくれる
カルロスゴーン氏がいかにして日産を再生してきたかについて、自身の学生時代、ミシュラン社時代、そしてルノー時代を通しての人格、哲学形成過程を含めて事細かに記した力作である。また、自筆とあって現実的であり、かつ説得力のある作品である。成功しか結果はないという賭けにも近い日産再建を,しかも日本という異文化ギャップがあるにも拘わらず成功へと導いている筆者については、既に評論家などが書いている書物はあるが、自身の語るこれまで表にはでていない葛藤については、大変興味深く新鮮である。特に不況下の元気のない日本の経営者にいろいろと示唆を与えてくれる作品である。かつてクライスラーを再建したアイアコッカ自身の書物があったが、ルネッサンスはこれを凌ぐものである。
カルロス・ゴーン氏が自身の生い立ちからビジネスにおける奮闘までを記した半自伝的ビジネス書。自伝的側面からは、ゴーン氏がどういう方なのかを間近に感じることができます。前向きでアグレッシブで、温かみを持った個性が感じられました。ビジネス面の記述からは、硬直した組織では基本的な経営策を実施することすらとても難しいという現実を垣間見ることができます。例えば本書では、物事に「優先順位をつける」ということが繰り返し述べられますが、それを日産でスムースに進めるのに数々の困難が多数あったことが示唆されています。欲を言えば、さまざまな経営策を実施するにあたって(優先順位づけにしろ、クロスファンクショナリティにしろ)、どんな抵抗や説得や妥協が繰り広げられたのかをもう少!!し具体的に知ることができればと思いました。ご本人がまだ日産のトップにいることを考えると望みすぎかもしれませんが。<P>本書を通して、日本が現在抱える問題のいくつかを明確に見ることができます。多くの人がなんとなく、うすうす分かってはいるものの、変化を起こせないでいるそうした問題が明確化されている、という点でも本書に価値があると思います。また、ゴーンさんの「異文化を理解しようと努力し、多文化を受け入れる」姿勢には大きな敬意を持ちました。こういう姿勢を持った方でなければ日産の建て直しはつまづいたのではないかと思いますし、こういう姿勢をわれわれ日本人がいっそう持つことが今後求められているのではないかと感じます。