なぜ、成功するネットビジネスとそうでないネットビジネスがあるのだろう。。そう漠然と考えていたが、本書の切り口には納得させられる。<P>数年で消え去る軽薄なネットビジネス成功のノウハウ本が多い中で、今起こっていることの大局観(思考のフレームワーク)が得られる秀作。小手先のノウハウに取らていると、一気に出コンストラクションされてしまうことがよく分かる。
ネットビジネスに関する書籍は沢山ある。個別論(A社のサクセスストリー)や成功の秘訣を語る本は特に多い。本書はそれらの本と異なり、「リーチ」・「リッチネス」・「アフィリエーション」という概念で、ITビジネス(事業)を考える視座を提供する。成功へのシナリオは一様ではないが、新興・既存組とも心得ておくべきキーコンセプトといえる。読み応えのあるヒット作品として推奨したい。
ネットが社会・経済に与える影響は地殻変動的なものであると言われる。必ずしも言われるほどに大変な変革であるとは実感できない企業や個人もまだあるかもしれないが、それは只単に気付かないだけで、そのように変革を知覚できない企業はある時、忽然として消え去る運命にあるかも知れないと本書は警告する。<P>本書はそのようなネット経済のもたらす本質的な変化を、もう少し理論的に整理しよと試みたものである。<P>執筆に当ったのはボストンコンサルティングに所属するコンサルタントグループであるだけに、実例を引いて分り易く解説してある。<P>冒頭述べたように、ネット経済という荒波は、既存のビジネスにとって根本的な変革を迫るものであり、この荒波を避けて生き残ることは出来ないことが、150年も続!いた名門企業であるブリタニカが、マイクロソフトの無料配布のCD百科事典によって淘汰されてしまった例を上げて語られる。正に、ネットの驚異をあなどり、あるいは意図的に無視しようとすることが如何に危険であるかの好例と言えよう。<P>本書はこういった荒波のことを「デコンストラクション」と呼んでいるが、このデコンストラクションは既存の企業のビジネスそのもの、人事、組織、経営のあらゆる面に変革を迫るものでだ。<P>本書が繰り返しのべるのは、ネット経済が今までの経済秩序と根本的に違うのは、企業と顧客との関係が、情報化の発達によって従来型の関係、すなわち、リーチ(範囲)とリッチネス(質)のトレードオフという束縛から解放され新しい局面を迎えているということだ。リーチとリッチネスの立が可能になると同時に、企業間での差別化が難しくなるから、「一人勝ち」が起き易い。<P>そのような競争環境の激化の中では、顧客との特別な関係、「アフィリエーツ」が重要になって来る。この認識の下で、既存の企業は何をしなければならないか、あるいは新規参入者としての起業家の取るべき作戦はどのようなものかを、シュワブ、アマゾン、デルなどの成功例を上げて分析している部分は中々面白い。<P>論法は経営コンサルタントらしい手法であり、ややもすると総論に終わる可能性もあるし、これをそのまま自社に当てはめるという訳にもいかないが、ネット経済のもたらす変革とは本質的には何かを考えるには参考になるだろう。