何もかもがいやになって、投げ出したくなったとき、逃げ出したくなったとき、<BR>この本をそっと開いてみるといいかもしれません。<P>「先生、ヨーロッパを旅行するのに、ぼくは窓ぎわにすわるのが好きですが、<BR>すわるのに順番があって、運のいい人が窓ぎわにすわるのですか。<P>先生はいま窓ぎわにすわっていて、ぼくが窓ぎわでないところにすわっているのは、先生の運がよくて、ぼくの運がわるいせいですか」<P>などなど。<BR>ところどころに、人生の本質が感じられるような、そんなやさしい本です。
脱走&気の向くままぶらり放浪記の印象の強い山下清の、何とヨーロッパ駆け足紀行です(20日間程度で、アンカレッジ経由でドイツに入り、以下スウェーデン→デンマーク→オランダ→イギリス→フランス→スイス→イタリア→エジプトより南回りで香港経由帰国するという、ハードな旅行。今時こんな旅程はないですよね)<P>旅行に行ったのは1960年ぐらいと思われますが、ヨーロッパの街並みはそれほど今と変わっていなさそうですね。山下さんの、一種とぼけた、しかし味のある思索・コメントがすごく楽しめます。また緻密な、一心不乱な筆使いが目に浮かぶような山下さんの挿絵が素敵です。<P>一気に読めて、数ある旅行記でもお奨めの部類です。気になるのは文体。山下さん独自のフレーズがあちこちに現れるのですが、全体としてはあまりにうまく纏まっている。山下さんはこんなに文筆にも才能があったのか、あるいは編集者の労なのでしょうか?後者だとしたら、もっと生に近い文体の方が楽しめたのではないでしょうか。
TVドラマでも人気のあった「裸の大将」こと故・山下清画伯が描く、とってもユニークなヨーロッパ旅行記。 清さんならではの観察の視点がとてもかわいかったり、時には的を得ていたりと読んでいて泣いたり笑ったりできる。挿し絵の点描画も素朴で旅先の風景がよく表現されている。 単なる旅行記とはひと味違うヨーロッパを味わうことができる一冊。