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文読む月日〈上〉 ( レフ・ニコラエヴィチ トルストイ 北御門 二郎 )

この本の凄いところは、トルストイが本当に古今東西の名言を集めたことにあります。<BR>ロシアで、どうして孔子、老子、仏陀の言葉まで集めることが出来たのか、ものすごいことだと思います。<P>二月七日<BR>(五)「全然夾雑物(きょうざつぶつ)のない完全性-それは神であり、神への接近-それが人生である(以下略)」(孔子)<P>(六)「私はいかに無教育でも、理性の道をたどって進むことができる。私が恐れなければならないのは、増上慢だけである。(以下略)」(『老子』による)<P>(七)「奇妙な話ではないか!われわれは外部からの悪には、換言すれば、他人から蒙る(こうむる)悪、どうにも排除できない悪には憤慨するけれども、いつも自分の支配下にある自分自身との悪とは、いっこうに闘おうとしない。」(マルクス・アウレリアス)<P>二月十六日<P>(三)「天と地を眺めて思うがいい。山も川も、さまざまな形の生命も、自然が生み出したものも、何もかも須臾(しゅゆ)にして過ぎ去る。まさに諸行無常である。(以下略)」(仏陀の言葉)<P>ローマ皇帝から孔子、老子、仏陀まで、凄いことだと思います。ぜひ座右の書にしてほしい一冊です。

訳者・北御門氏は,学生時代にトルストイの作品に出会いトルストイ主義に傾倒。徴兵を拒否した体験を持つ。トルストイに倣って自らも開墾生活を送る一方,独自にトルストイ作品の翻訳を行い,発表してきた。「翻訳に大切なことは,原書に感動し,読者とその喜びを分かち合いたいと思うこと。だからトルストイが涙して書いたところは,私も泣いて訳します」と自らの翻訳姿勢を語っている。それゆえ従来の諸訳に対して批判的でもある。「在野の露文学者」と言えよう。<BR>この『文読む月日』は,戦前に原久一郎が訳したもの(『一日一善』と題された)以来唯一の邦訳である。上下二巻のハードカバー版が今回,手に取りやすい文庫本として出版されたことで,北御門氏の訳業が広く知られる機会が与えられた。<BR>内容は諸賢の箴言とトルストイの言葉とが一日一章の単位でまとめられている。普通に通読してもよいし,一日一章ずつ味わって読んでいってもいいだろう。現代人にとって実に深い示唆に富む言葉が詰まっている。私も知らず知らずさまざまなところに傍線を引いてしまった。<BR>北御門氏がトルストイの思いを少しでも深く汲み取ろうとしてできた邦訳によって,我々がトルストイの真髄によりよく近づける路ができたことを喜びたい。

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