この人、山田昌弘さんがパラサイトシングルという言葉の生みの親です。しかし、もはや、日本経済が悪化の一途をたどっている現状では、若者は仕事を得ることができないので、パラサイトするしかないのではないでしょうか?とりあえず、教授に「読め」とご支持された本です。
「パラサイトシングル」という言葉は,現代日本の青年層の社会学的性向を読み解く鍵概念としてマスコミでしばしば紹介され,流行語の一つになった観がある。この用語では親元にいる成人未婚者をパラサイト(寄生生物)扱いしているわけだから,そこに一種の不穏当さがつきまとう。しかし,それは問題を描出する目的には適うのである。すなわちこの用語は,親と同居している未婚成人が日本で現在1000万人にも達しようとしていることに対する問題提起なのである。このパラサイトシングルの増加は,同居の親に頼って経済的な豊かさを享受している独身者にとって結婚して独立し子供を作るということが生活水準の低下を意味することになるという状況を反映している現象である。しかし,ここから発生する問題の責を若い世代にのみ求めることは誤りである。ここには,日本的な親子関係のあり方や終身雇用制度といった,社会的,文化的な背景がある。<P>青年層の自立に伴う困難はどこの社会にも見られることである。そして社会ごとに特徴ある対応がなされている。本書では,自立意識が高いアメリカと収入の不安定な若い世代が社会福祉によって手厚くバックアップされているスウェーデンの例が挙げられている。このような国々と比較すると日本では,収入の少ない若い世代を親の世代が援助するという社会システムを採用していると見ることができるのかもしれない。それゆえ,パラサイトシングルの増加に伴う問題は,その社会システムの失調として捉えて,それに社会全体で取り組む必要があることが説かれている。現代日本を理解するための基本的文献である。
バラサイト・シングルという存在に着目したこと自体が素晴らしい。また本書は、バラサイト・シングルがどのような背景から生まれ、存続するのか、その実像はどうなっているのかについて、社会学者としての問題意識とこなれた文体で書かれている。テーマ設定といい、アプローチの方法といい出色であり、たぶん何年かに一度現れる傑作といえよう。