ものごとに対して、なんとなくわかった気になっていても、心に違和感を覚えることがあると思います。そんな心のモヤモヤが多い方には、特にオススメします。<BR>「わかる」とは「感情」である。自分が創り出す心の中のイメージによる作用である。そんなことを基本に「わかる」ことについて書かれた、とても「わかりやすい」本です。<P>まず、「心象・言葉・記憶」などの「わかる」ことをわかるために必要な基本概念を解説しています。<BR>その上で、「わかる」ことを「全体像・整理・仕組み」などの観点で分類し、「わかる」という感情が生まれるメカニズムを例を挙げながら丁寧に紐解いていきます。<P>そして、真に「わかる」ための実践的なヒント、たとえば、内側から生まれる知的欲求、理解と行動の関係、琡?解の階層などについて、科学的知見とともに著者の思想をバランス良く記述しています。<P>総じて、現代の社会が必要としている、素晴らしい入門書だと感じました。しかし、著者の社会的メッセージがもっと強く表現されていてもよかったと思いました。加えて、入門書として成功しているのですから、参考図書を掲載することで、より深いレベルに進むことができるようにしていただきたかったです。このため、星をひとつ減らしました。
著者のエッセイも織り交ぜながら「記憶」と「認知」に関しては非常にわかりやすくなります。ただ後半からはダラダラとながくなりがちですが・・神経心理学入門編ってところでしょうか。でも神経心理学研究の第一人者でもある著者のプライベートも垣間見るようで・・なかなか楽しめます。
高次脳の研究をされている教授が興味深い教養書として「わかる」ということを深く楽しく解説をされている。自分が相手に伝えたいこと、それを相手がわかってくれているだろうか、だとしたら「わかる」というのはどの程度を「わかる」というのか、という疑問が普段の仕事上の人とのコミュニケーションでも気になっていった。本書は物理学から禅のお話、歴史、日常生活の一コマなど様々な事例の中で「わかる」ということを著者の専門家の解説、見解で述べられ、深い洞察を得る機会となった。「わかるために何が必要か」という章では、「心は多様な心象から意味というより高い秩序(別の水準の心象)を形成するために絶えず活動している」という文章が出てくる。それには記憶と知識の網の目も必要ということだ。噛み砕いた説明が読みやすかった。また自らが普段、「わかる」ことを怠っていることに気付き、反省すると同時に「わかる」ということがいかに高度な脳のはたらきか感嘆した。