この本はあくまでも現在の日本型組織・経営方式が将来にわたっても変わらないものであることを前提に、「健全」な経営のための「戦略」が簡易に述べられている。<P>しかし、激動の時代の昨今、戦後50年間の歴史しか持たない日本型経営が一体どの程度まで残るのか疑問である。たとえば私の会社でも数年前から「主任」「課長」などの呼称がなくなったことに象徴されるように、ボトムアップであった日本型経営の変化が実感される。<P>ただ差しあたっての応急処置の方法論として一読の価値はあるかもしれない。その際には、ただ読んだだけでは全く無意味で、実践をすることが必要であることは言うまでもないであろう。
日本企業の本質は”コア人材の長期雇用”にあるとし、組織はヒトを替えずに変える人材育成と、個々人の社会的欲求を満たす人事評価を行うよう提言されています。また、”層別”もキーワードになっており、コア人材の層別、業務プロセスの層別、業務内容の層別等が挙げられています。<P>個々の話(具体例?)も面白い。上記のような”定石”をいかに実践するか、どれだけ困難か、(実感までいかないが)納得して読み進められます。「ザ・ゴール」もよいが「クリティカル・チェーン」も参照したい。
「ザ・ゴール」を読んで、この考え方をホワイト・カラーの仕事に応用できまいか。誰か、しっかりとそのような考え方を展開する経営学のアカデミズムの方がいないだろうか。<P>漠然と考えていたが、この一冊の中で、著者はしっかりとした結果を出せるミドルの時間をボトルネック、稀少財として、業務設計、組織設計をする。ということをさりげなく提案している。この一点だけでも、この一冊は、経営実務に携わる人にとって、価値ある一冊。また、何度も読み返すべき一冊ということになる。<P>また、カタカナ組織論に浮かれる前に、まず、しっかりとした「官僚制」を組織基盤として確立するべき。とも説いている。<P>企業組織のあり方というものは、誰でも一家言もつことができる。誰でも現状を批判し、改革案㡊??異を唱えることができる。経営者も迷いがちにもなる。が、この一冊が示すポイントをチェックするだけで、まあ、大丈夫というところなのか、相当まずいのかがわかる。<P>これからも出てきそうなカタカナ経営組織論に振り回される前に、あるいは、心動いた時に、この一冊に戻るようにしたい。読みやすく、おもしろくもある。奇を衒っていない。小さいながら良書である。