刺激的な本だと思います。私自身は宗教思想が専門で、政治学についての知識はあまりありませんが、何かこの書からは宗教的なメッセージとでも言いうるようなものが匂い立ちます。著者はその生い立ちから、こうした著作をものするとき、全存在をかけていたのではないでしょうか。<P>20世紀を代表する思想家であると思いますし、難解ではありますが優れた書であることは間違いないと思います。
どうしてもここに存在している気がしない、息苦しく切実な危機を感じ取っているひとにお薦めしたいと思います。<P>アレントとの出会い方はいろいろでしょうし、読み方もそれぞれだと思います。私の場合は、たまたま書店で手にとったという幸運な偶然がその出会いをもたらし(amazonではそうはいかないのでレビューを書きますが)、「存在の希薄さ」という思春期にありがちといえばありがちですが息苦しく辛い疑問に、丁寧にそして鮮やかに応えてくれた本でした(どんな大人も、どんな哲学の本も成し遂げなかったことでした)。<BR>志水訳のすばらしさはみなさんの認めるところだと思います。<BR>よい読後が訪れますように。
よくわからない本といえば、よくわからないし、わかるといえばわかる本。前提知識はいらない。あった方が余計かも。<BR>《労働》《仕事》《活動》の区別、<zoe><bios>という人間の生命の分け方、「私的領域」と「公的領域」の区別などを通して、現代大衆社会を見ていく。ナショナリズムと公共性の概念などについて、非常によく整理されるのではないだろうか。<P>しかし、アレントが訴えるような公共性の復権はいささか問題がある。それについてはアガンベンなどを読まれるといいだろうと思う。アガンベンはアレントの論をただし、剥き出しの生を前面に押し出した公共性を訴える。これについては斉藤純一「公共性」なども参照されると良い。<P>訳はすばらしい。おそらく、英語よりも日本語の方が読みやす!!!だろう。名訳である。