社会階層が再生産される仕組み・過程を、フィールドワークを通じて浮き彫りにする良書。まあよくぞここまで調査したものだ、と、偉そうにも感心してしまう。社会科学系の学問をやりたいひとは、フィールドワークの事例として必読ではなかろうか?<P>また、テーマは社会階層再生産論である。これが、「イギリスは階層社会だから」などと思っている貴方。苅谷剛彦氏や佐藤俊樹氏の本をご一読あれ。日本でも、見えにくいですが、階層再生産が働いているのです。
イギリスは階級社会といわれてきた。この本を読むとますますその感を強くする。社会は「おれら」と「やつら」に分かれており、そして「おれら」は「やつら」とはちがう独自の価値・文化をもっているのだ。こうして階級社会は再生産される。<P>同時に本書は、日本におけるイギリス労働運動賛美論の一面性を教えてくれる。労働運動の連帯は、イギリスでは、労働者文化の維持・再生産によって確保されてきた。つまり、個人としての社会的上昇が困難であるがゆえに集団として連帯することができた(せざるをえなかった)のだ。<P>はたして近年の経済的社会的変化(サービス化・ホワイトカラー化、新自由主義的改革、経営の「日本化」)はどのような影響を労働者文化にもたらしているのだろうか。本書はこれからも!!当分の間、イギリスそして日本を考えるための重要な書物でありつづけるだろう。