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| 〈セロ弾きのゴーシュ〉の音楽論―音楽近代主義を超えて
(
梅津 時比古
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宮沢賢治の童話を題材に展開される音楽論。現代のクラシック・ミュージックが忘れかけている音楽の身体性に光を当てる試み。<P> 音楽批評において軽視されがちな楽器と演奏者の相互関係を皮切りに、楽器の練習における「メカニカルな技術の訓練」と「曲自体の練習から習得・向上する技術」という対比、調律と調性の問題まで幅広く取りあげ、音楽が歩んできた近代化路線に疑問を呈している。しかしながら、単なる反近代の立場からは問題が解消されないこともフルトベングラーの思想を通じて述べられており、読者各自の思考が促されている。<BR> 童話の音楽的解釈として読んでも充分興味深く楽しめるので、購入して損のない好著と思う。
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