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製品開発の知識 ( 延岡 健太郎 )

開発業務を初めて担当したものの考え方のフレームワークもわからない中、参考となるものを探していました。この本は新書ですが考えさせられる要点を押さえるだけ押さえた本だと思います。「新製品を生み出すのじゃ~」とボスから吼えられる毎日はさておき、基本をきちんと捉え直す機会を得ることができました。

 本書は、製品開発について非常にわかりやすく説明したテキストである。製品開発論は、近年の経営学において精力的に研究が蓄積された分野であるが、これまで手頃な入門書に欠けている感があった。本書はそのようなニーズを満たす最初の邦書になるかもしれない。<BR> より具体的には、次のような評価ポイントが挙げられる。<BR> 一つめは、さまざまな既存議論が体系的に整理されている点である。製品開発は、もともと学際的な経営学の中でもとくに学際性の強い分野である。そのためその知識を体系的に整理するのはなかなか容易ではないが、本書はそれをうまくクリアしている。<BR> 二つめは、製品開発に関する考え方や視点が重視されていることである。ややもすれば、具体例の羅列やヒット商品の開発秘話といったジャーナリスティックな記述に終始しがちな製品開発であるが、本書ではそうした個別事例の背後にあるロジックが強調されており、複雑な問題について考えるのに適している。<BR> 三つめは、記述に首尾一貫性があることである。広範な知識をカバーするために共著形式がとられるテキストが多いが、その代償として、全体像が見えにくくなりがちである。しかし本書は一人の著者によって書かれているため、話の流れが非常につかみやすい。<BR> 四つめは、読者の理解を促すような図が随所に用いられている点である。著者は前著でもみられたように、コンセプチャルな図式化に非常に長けている。<BR> 惜しむらくは、技術的複雑性の高い製品に比べて、市場ニーズの複雑性が高い製品に関する議論が少ない点である。また近年では、物理的な製品そのものだけでなく、サービスとの組み合わせが重視されてきているが、その点についての記述も欲しいところである。しかし紙面の都合を考えれば、これらは諾うことだといえるだろう。

厚さが厚さであるだけに、あまり多くの具体例は記載されていない。 しかし、抽象的問題の最たる製品開発に関して、これほど体系的に説明してくれる書物は見たことがない。<BR>口当たりの良い和製英語や冗長なだけのものと違って、考え方の本質的事柄をかなりの合理性をもって理解できると思う。<P>ただひとつ、3次元CADに関する記載は、あまりに唐突な印象だ。 なぜ3次元CAD?  機械工学に限定すれば確かにその意味もわからなくもないが、他の分野でもそれぞれ3次元CADに匹敵する概念がたくさんあると思う。<P>製品開発に関する例示は、やや日本に偏っており、日本びいきなように感じなくもない。

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