本書は、経営学領域において世界に誇れる数少ない良書だと思います。本書で紹介されている‘ダイナミック適合’の理論は、もう何十年も前に世に発信されたものですが、いまだに色あせていません。それどころか、リソース・ベースの戦略論が台頭してきたことにより、世の経営学者および実務家は、改めて伊丹氏の先見性に驚かされています。<P>経営学の世界的な大家であるMintzbergも、かの有名な「戦略サファリ」の中で、本書で紹介されている伊丹氏の理論を‘大変興味深い’と紹介しています。経営学を学ぶ学生、研究者、実務家は、この本を読まずして、経営学を語ることはできないと思います。
内容の素晴らしさについては他の評者の方が十分に書かれているので、ちょっと別の面からこの本の素晴らしさについて指摘したいと思います。<P>それは全体の構成についてです。<P>読み進めると、なぜこの本はこうも読みやすいのか、ときっと思われると思います。その秘訣はストーリーの階層構造にあると思います。<P>この本では、メッセージが大メッセージ、中メッセージ、小メッセージとそれぞれ三角形のフラクタル構造になっており、例えば本全体のポイントはA、B、Cの三つで、Aはp、q、rの3つがポイントで、さらにpを行うにはイ、ロ、ハが大事です、といった様に非常に構造的に整理されています。<P>これは全体の論理が強固に考え抜かれているからこそ出来ることで、レポートやプレゼンテーションを頻繁に作成する職業の方や、院生、研究室に居られる方には格好のお手本になるかと思います。<P>確か、伊丹先生は創造的論文の書き方、という著作も出されていたと思いますが、個人的にはこっちの本の方が、創造的論文の書き方という観点からは学びが大きかったように思います。<P>最後ながら、もちろん経営学としての示唆・含蓄も比類の無い完成度の高さであると思います。私は個人的にはポーターに代表されるポジショニングベースの戦略論と、リソースベーストビューの戦略論の双方を強固なフレームで包含している世界的にも稀な完成度を持つ経営理論体系であると思います。
顧客、競争、ビジネスシステム、技術、資源、組織の6つの戦略適合が詳しく書かれている理論的な本です。ぜひお勧め。<BR>特に、資源や組織についてページを割いているのが類書にない特徴でしょうか。<BR>組織は戦術のレベルではなく、戦略のレベルであるということですね。<BR>400ページ超のこの濃さで1900円はお得ですよ。