自己組織化などというものは,東洋にとってはごく自然で当たり前のことのように思うのだが,因果関係をきちんと整理しなければならない西洋にとってはまさに一大事なのである.原因もないのに物事が勝手に生起してはならないのだ.ところが自然界ではごくわずかの揺らぎが指数関数的に成長し,それらがエネルギーを散逸しながら非線形に干渉しては新たな構造を生み出している.その最も究極の姿が生物だろう.<P>私がこの本を読んだのは出版直後だったが,流体力学で乱流を学んだ者にとっては,取り立てて新しいことはなかった.しかしそれでもこの本は十分に楽しめた.化学反応のネットワーク,局所最適化などは汎用の使い出がある考え方である.<P>複雑系のブームは去ったが,これでまたひとつ西洋は賢く!った.複雑系を当たり前と思ってきた東洋は何か得るものがあったのだろうか?
自己組織化の過程が進化で重要な役割を担ったのは納得できるし、<BR>面白い本なのは確かです。<BR>でも、それは自然選択と対立する説でもなんでもなく、<BR>(そのあたりはちゃんと読めば明らかにされている)<BR>自然選択まずありき。ってことには変わりありませんね。<BR>そういう意味では勘違いされやすい紹介のされ方が多い本ですね。<P>もちろん、この本自体は、すばらしい、楽しい本です。<BR>紹介の仕方がもひとつってだけで。
進化とは突然変異と自然淘汰だけではなく自己組織化によってもたらされるというのがまず主張される.だがその話はこの本の中心ではなく導入に過ぎない.話題はやがて最適化へと移る.進化とは最適化活動であり,最適化とはいかに困難な事なのかと実感させる話題が次から次へと持ち出される.さらに複数個体による共進化,部分組織化といった耳慣れない言葉もやがて馴染んだころに最も複雑な人間の経済活動ネットワーク,さらに地球文明の最適化へと話が進んでゆく. この本は進化の専門家には物足りないかもしれない.また複雑系,自己組織化という概念がもはや当然の概念として使われるため,そういった予備知識がない人にもやや辛いかもしれない.しかし最適化問題に興味がある人,複雑系と呼ばれる!野に興味がある人には必ず何らかの影響は与えるだろう.特に最適化に関しては,従来の古典的手法に飽き飽きしてる人には何らかの刺激を与える事は間違いない.本文中の至る所で,人間は生まれるべくして生まれたと思わされる一方で,未来の予測が不可能な世界で生きているはかない存在だとも知らされる. やや言い回しがくどく,訳が悪いせいか読みにくい部分があるものの,内容に関しては極めて興味深く,読み終わるころには世界観が変わるほどである.間違いなく何らかの発見があると思う.自己組織化,最適化に興味がある人は間違いなく読むべきである.