記憶に生じる誤りを7つの種類に分け、それぞれについて平易な解説が試みられている。脳の働きについての専門知識が無くても楽しく読めるし、分量も程良い。もうちょっと訳に工夫が欲しいという箇所が幾つか有るが、語り口は概ねテンポが良く、色々な実験結果を紹介しながら展開するので、『特命リサーチ200X』でも見ているかのよう。日本向けを狙ったかのかどうか知らないが、冒頭川端康成の小説の一シーンが紹介されるのも引き込まれる。とにかく読んでみて記憶というものが実は如何にいい加減なものかよく解った。暗示を使えば、現実とは違った記憶を比較的簡単に作り出せるというのは考えると空恐ろしくなる。今後個人的には出来るだけ記録を残して、自分で間違いないと思っている記憶についても時には!謙虚になるべきなのかとも思った。
記憶の研究というのは大変に興味深いものだ。自分自身の体験と比べながら考えることが出来るのも、そのおもしろさの一因だろう。<BR>本書は広範囲にわたる研究成果を、日常生活と関連付けながら概観でき、翻訳も読みやすい。一般の社会人や大学生の教養書として良書であることは間違いない。<P>専門の研究者には物足りないだろうが、それでも一読をお勧めする。専門家はとかく視野が狭くなりがちだからだ。また、本文中には指示がないので、読み終えたところで「原注」があるのに気が付く読者も少なくないだろう。
私は日本語版と英語版を読み比べてみました.<BR>そこで気づいた表面的なことをレビューします.<BR>①エッセイ調の軽妙な文体なので飽きずに楽しく読めます.<BR>科学論文の文体ではありません.<BR>ただ,逆にそのエッセイ調の文体(ちょっとしたレトリックなど)につまずいたということもありました.(もちろん読めないほどではありません).<P>②文章中には実験や過去の出来事なんかが多数紹介されていますが,日本語版にはその出典がかかれていません.<BR>英語版では巻末に出典がのっています(文章中での,Schacter,D.L.(1999)というような表記はありませんよ)