ビジネス系の書籍を読むスピードにはかなり自信を持っていたが、この1冊を読破するために随分と時間がかかってしまった。<BR> <P> 最初に述べたことは、なぜこの本が文庫なの?ということだ。大げさに言えばこれまで書店に並んだ思考の技術系、ビジネススキル系の書籍はすべて買うかその場で内容を確認するかしてきた。その度、実務に使えるものが少なくタイトルにだまされた、時間を損した、と思うことの方が多かったのが正直な<BR>ことろだった。<BR> <P> 私の場合、コンサル業務につかえないかなァ、研修に示唆を与えてくれる何かがないかなァとというスケベ心をもちながら読んでいる訳で、そんな動機を<BR>満たしてくれる1冊とのめぐり合いは稀なことだ。<BR> <P> この「思考力と対人力」はまさに実務に活かせるコンテンツと表現だと思う。実務家であるビジネスマンにいかに理解しやすくするかという配慮が端々にみられ、かつその効果が出ていると感じる。難解な概念を最大多数に理解させる表現で紹介し、かつ深みもあるというビジネス書ってそうはない。この<P>分野に興味を持つビジネスマン、ビジネスウーマンに推薦したい。<P> マイナス面は、文庫版であること。ソフトカバーであっても単行本サイズが<BR>よかった。
ビジネススクールorMBAものは「専門能力」にフォーカスしたものが多かったが、ここ1~2年で「思考力」や「対人力」を扱うものが多くなってきた。しかし本書のように、網羅的であるにもかかわらず、オリジナリティに溢れ、しかも平易に書かれたものは、最近でも見たことがない。<P>オリジナリティという点で特筆すべきは、往年の交通標語をも凌駕する見出しの素晴らしさだ。「頭の規制撤廃をしよう!」「いつも心に氷山を」など、キャッチーであるだけでなく、なぜか元気が沸いてくる著者ならではの表現が満載されている。<P>本書の中で筆者は、知識を振り回す「鼻持ちならぬMBAホルダー」やカタカナ経営用語の一人歩きを痛烈に批判している。平易な文体への強烈なこだわりが全編にわたって感じられるが、このこだわりは"MBAホルダーである"筆者が主張する「自分を知ること」の重要性を読者に身をもって示したいという気持ちのあらわれなのかもしれない。
最近、ロジカルシンキング、クリティカルシンキングといった、「論理力」系の本が大はやりである。<P>そういった本の「はじめに」では、大概、「論理力があれば十分というわけではないが、論理力を身につけることは必要」などと書いてある。<P>では、論理力以外に必要なものは何か?<P>著者は、論理力(クリティカル思考)以外の思考力として、発想力(クリエイティブ思考)、また、思考力以外に必要とされるコアスキルとして、対人力が必要、としている。<P>本書では、思考力(論理力+発想力)と対人力のそれぞれについて、概略的な解説がなされている。思考力と対比させる形で対人力を前面に出すアプローチは、非常に共感できる。多くのビジネスパーソンに一読をお薦めしたい。