これまでに書かれたレビューを拝見すると、山形浩生氏の口語訳に対する嫌悪・違和感を強調される方が多いですが、この本は一般の方々を対象とした”正統マクロ経済学”の本としては、間違いなく”ピカイチ”です。 <P>私も最初は独特の口語訳に拒絶反応を感じましたが、一方で原著を読む限りこの訳はある意味原作に忠実な訳であることも事実です。 好き嫌いは別として、この本は内容を完全に消化するまで読み込む価値のある経済本と言えます。<P>私は資産運用を生業としておりますが、ジュニアなファンド・マネジャーには必読本として薦めております。経済英語の勉強もあわせて強化したい方は、この本を原文で読まれることを強くお勧めします。<P>
著者によれば「中身があって」かつ一般読者にも分かりやすい経済の本を出すことを目的として書かれた本らしい。現在のマクロ経済上の重要なテーマを広範にかつ極めて鋭い洞察力をもって本質を捉え、それを分かりやすい言葉で説明しており、当初の目的は十二分に達成されている。原書は97年に発行されたものであるが、今読んでもホットな話題も多く、本質を突いた説明に感服させられる。<BR>しかし、実際は非常に複雑な現在のマクロ経済の諸問題を分かりやすく痛快に断定することによって、一部の読者と恐らく著者自身にとっても、著者の導く単純な結論に過剰な権威と自信を与えてしまった可能性がある。<P>当たり前のことであるが、クルーグマンも神様ではなく、これだけ広範囲な内容では見込み違いは時々起こる。例えば、米国の生産性の上昇でほとんどの経済問題は解決してしまうと予想しているが、現時点ではむしろ生産性の上昇が雇用を抑制している可能性があると考えられており、また財政、貿易赤字の縮小にも役に立っていないようだ。<P>それから、ボルカーFRB議長がマネタリストの主張する単純な命題に従わなかったことによって勝利を収めたとする一方で、「マネーは中立的」という命題を公理のように扱って、日本経済に対する処方を出している点は興味深い。<P>「流動性の罠」を動的に拡張して結果を導く議論は巧妙であるが、結果として導かれる処方は「人々にインフレ期待を引き起こせ」という、常識的かつ簡単な結論である。クルーグマンはこの本の後にも、同様の議論を何度も繰り返すし、このクルーグマンの単純な結論をめぐって、その後何年も不毛な経済論争が繰り広げられることになる。それはこの本自体の責任では無く、日本の経済学界の貧弱さが問題なのかもしれないが。<BR>尚、翻訳は慣れると読みやすく、本の内容に合致していると思う。
訳がこなれていて、楽しく読み進めることが出来た。この本を読んで山形浩生氏のコラムなどにも興味を持つようになった。アメリカ経済を題材として、経済学の主要な考え方を詳しく説明していると同時に少し発展した話題にも触れており、これから経済を学んでみようと思っている人には良い入門書となると思う。日本経済についても最後の方で解説し、流動性の罠について説明している。