非常にわかりやすく議論に説得力と論理の裏づけがある。銀行問題を論じた書物はたくさんでているが、わたしは「隔靴掻痒」の感をぬぐえなかったが、この筆者は元住友銀行の本部行員だったことなどから、銀行内部の視点が随所に示され興味をそそられる。昨今の銀行悪玉論に真っ向から反論し、銀行員諸賢からは「よくぞ言ってくれた!」と喝采を浴びているだろう。わたしも銀行だけが悪者にされる今の社会や銀行行政、マスコミのあり方には疑問をかんじていただけに、疑問に解答が与えられた感を覚えた。
おそらく世の銀行員の多くは、昨今の銀行批判と自らの不甲斐なさに「銀行の仕事は世の中で役に立っているのだろうか?」「子供に自慢できる仕事なのだろうか?」と自問する日々を過ごしているにちがいない(と思う)。<BR>本書は、そんな懺悔の思いを払拭してくれるバイブルとなろう。<P>前半は、「銀行事業」というキーワードを皮切りに、銀行が本源的に持つ金融取引円滑化機能、金融仲介機能、通貨供給機能という三大機能を展開して、銀行のミッションを明らかにする。投稿者は、大学で経済政策を専攻し、覗き見気分で銀行論をとったこともあったが、これ程の整然とした説得力のある入門書に出会うことはできなかったし、現在ただ今までなかった。浅学なので、他に良書があるかもしれないが、本書のような現!場感覚のある銀行機能論は類を見ないのでないか。是非、著者には、ダイジェスト版を一般庶民向けに出版していただきたい。<P>後半は、今後の銀行経営に対する提言だが、正直、よく分からない。著者はコンサルタントとしてのキャリアが長いはずだが、なんとなく生煮えだ。様々な方法論を常識的な当てはめ方をせずに応用のオンパレードとなっているが、トリッキーと思えなくもない。新味を出そうとしている努力は買うが、それまでだ。それだけ、今の銀行を取り巻く環境は複雑で厳しいということか。