物語の最終章、指輪に支配されつつあるフロドは使命を果たせるのか?圧倒的な大群に立ち向かっているアラゴルンはじめ指輪の仲間達の運命は? この決着がつくシーンではなぜかワグナーのあの序曲が頭の中に鳴り響きました。重要な役目を果たすゴクリ、この落ちはガンダルフも私も少し予想してましたが、私は彼に何とも言えない哀れさを感じました。『一切合財が終わる今、ここにいてくれて嬉しいよ、サム』この気持ちは旅の間ずっとフロドが抱いていた気持ちでしょう。私もサムに感謝! 第1部でのエルロンドの言葉『大いなる者の目がよそを向いている時、小なる者の手がやむにやまれずしてそれを成し遂げるのだ』普段は目立たないけれどいざとなるとリーダーシップを発揮してくれる人いますよね。トールキンが描きたかったのは英雄ではなく、そういう平和を愛する力無き普通の人々ではないでしょうか。ホビット4人組は物語を締めくくる新たな試練に出会います。4人の成長振りが良く出ていて感動ものです。そして灰色港での別れ。『愛する者が危機に瀕している場合、誰かがそれを放棄し失わなければならない。ほかの者がそれを持っていられるように。』この言葉は胸に突き刺さります。現実の人間の歴史の中にも大勢実在したと思います。<BR>終わって欲しくない、ずっと物語が続いて欲しい。さあもう一度最初から読むぞ~!
指輪戦争が終った。それで大団円かと思いきや、下巻はまだ半分も終っていない。ホビット庄から始まったこの物語はホビット庄で終る。そしてそれは決して単なる付けたしではなかった。<P>物語を貫く大きな事件が終る。その事件が終った直後から真の主題が現れる。そういう構造の物語はたいてい名作である。映画では省略されている「ホビット庄の掃蕩」がなければ、この物語は真には終らなかった。いやはや見事な終り方であった。私はこの物語の主題は著者がどう言おうとやはり「戦争と平和」だと思う。<P>「王の帰還」の「王」ははたしてアラゴルンだろうか。ほとんどの人はそう思うのだろう。しかし私は違うと思う。
主人公フロドは、幼い頃両親を亡くしている。だから養子に迎え入れたビルボが父を象徴するのかといえば、そうじやない、ここはガンダルフが入るのだろう。ガンダルフはフロドにとって頼りがいがあり優しいが、厳しい「問題」も突き付けてくる強い父の象徴なのだ。<P>フロドは愛する故郷を救うため厳しい旅を続ける。モルドールに侵入してから彼を物資的に支え、精神的にも支える(支えあっている)従者サムは彼にとっては無意識ではあるが優しく温かく励ましてくれる母であり、愛する故郷の大地をも象徴していたのかもしれない。<P>いよいよ体が動かなくなったその時、その母であり故郷の大地によって彼は目的地へと抱かれ運ばれてゆくのだ。<BR>彼は、この過酷な旅においてしっかりと両親の愛に包まれていた!のかもしれない。<BR>だからこそ、「灰色港」の章では、文字が滲んでぼやけて読みずらかったのだろう。<P>物語が終わっても母であり故郷の大地でもあるサムには、まだまだやることがいっぱいある。その中には、私達読者を元の世界へ優しく送り届けてくれることも含まれているのだろう。