数ヶ月前に氏がNHKの『人間講座 若者の心のSOS』でサブカルチャーをも交えて若者の心の病理を解説していたが、そこで話していたことにひきこもりに対する具体的な解決法を加えて出版したような内容になっている。<P>もっともこちらにはエヴァンゲリオンなどのサブカル関連の話題は出てこない。専ら精神的病理の観点から見てひきこもりをどう解釈するか、そして実際にどうやって対処するかと言うことが書かれている。<P>氏の意見は極めて中立的であり、ひきこもる若者に対して力や精神論で無理やり社会へ参画させることはもちろん、それを全面的に受け入れてひきこもりを良いものと捉えることもまた危険だと説いている。その上で精神医学的にひきこもりがどのように解釈できるのかをいくつかのケースに分けて解説し、例を挙げながら解決の具体的な方法にまで触れている。<P>いざこの本に書かれていることを実行しようとすればかなりの困難を伴うことが予想され、斉藤環氏のような精神科医が近くにいるような幸運に恵まれなければなかなか難しい手法もあるだろう。しかしここに書かれていることはひきこもっている本人にも、それを解決しようとする家族にもできる限り負担が無いように考慮された実際的なものであることには好感が持てる。<P>もっとも私の周囲にも兆候が見られるひきこもりの若者に対してこれをどう勧めれば良いかは難しいところであると感じる。しかし知識として知っておくことでひきこもりへの接し方は格段に変わってくるはずである。子を育てる世の大人にはみな読んでもらいたい内容である。
「ひきこもり」が長期化した場合の対処についてもきちんとフォローされているところに好感を持った。生活費は必要だし、家庭は世代交代しなかったら消滅するしかない。「時間」と「金」という2大問題は何人たりとも避けて通れない。
先の書評に書かれているように、理論編などは非常に分かりやすく<BR>社会的ひきこもりの一因を社会的病理に見ている点はさすが斎藤先生の著作だと思いました。<BR>ただ、社会的ひきこもりの増加傾向を社会的病理に見るという<BR>着眼にしても一つだけ注文を付けたいです。<P>というのも、<P>ひきこもりの端緒として思春期における精神的ショックの長期化(いじめ、不登校、失恋など)という点が挙げられていますが、<BR>これらの精神的ショックは僕たち若年世代よりもずっと年上の方でも通過儀礼的に通ってこられたものであり、<BR>以前も変わらずあったにもかかわらず、ここにきてこれらの原因を指摘されても、<P>社会状況論としては、論拠がはっきりしないように思われました。<BR>日本の社会的、文化的位相に論拠を求めるにしても、ほとんど言及されておらず、もう一歩突っ込んでほしかったというのが本音です。<P>とはいえ、齋藤先生の専門外への注文を付けているのは確かです。<BR>社会的病理に対する、社会学者との共著などによって、<P>大きく学問的に掘り下げられ理解が深まることを期待したいです。<BR>社会的ひきこもりが医学的アプローチだけでは到底解明できない<BR>病理を抱え込んでいることに気付かせてくれた一冊でした。<P>後記:<BR>後日、宮台慎司氏らとの共著が出ているようなので、<BR>そちらを参考になさるのもまた楽しいかもしれません。