脳はいかにして“神”を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンス みんなこんな本を読んできた 脳はいかにして“神”を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンス
 
 
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脳はいかにして“神”を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンス ( アンドリュー ニューバーグ ヴィンス ローズ ユージーン ダギリ Andrew Newberg Vince Rause Eugene D’aquili 茂木 健一郎 )

これが原題です。私は文科系なので、どちらかと言うと後半二章が面白かったです。哲学的素養に裏付けられた、欧米の科学者の著作を読むのは、何のための研究かというベースを見失っていないので読み応えがあります。我々が寄って立つ限界を、脳神経学と言う切り口で解き明かした、これもひとつの宗教なのかもしれません。訳者の茂木氏は、ソニーのクオリア・プロジェクト立ち上げのきっかけとなった人のひとりです。この著作は、経済の先行きさえも占います。

著者達は、最新の核医学測定装置(SPECT:単光子放出断層撮影)を使用して宗教的な神秘体験をしている瞬間(実は少しの時間的ずれがあるのですが)の脳の活動の測定結果に基づいて、神秘体験(「絶対的一者」との融合)と脳機能との関係を解き明かそうと試みます。特に最新の脳神経学の知見に基づいた「脳の機能」「神話の創造」「宗教儀式の発生」「宗教の起源」などの議論は非常に興味深く勉強になります。『瞑想あるいは宗教儀式を通して、方向定位連合野(自己の感覚を作り出し、それを空間内で位置づける機能を担う脳の部位)への情報が遮断され、自己と非自己との区別が無くなった神秘的合一の瞬間に、自己を超越するリアリティーの感覚に吸収されてしまったように感じる』との彼らの主張も説得力がります。そこに<神>を見るのですね。<P>ただし、彼らの考察は脳神経科学(neuroscience)では無く脳神経学(neurology)の立場からの考察なのでどうしても脳の巨視的活動しか見ていない上に、彼らの実験方法では外的擾乱の無い状態での脳機能の時々刻々の詳しい時間的経緯は測定できない等の欠点があります。そう言った欠点に対する彼ら自身の考察は一切ありません。また、最後の2章「現実よりもリアル」と「神はなぜ消えないのか」は、かなりの範囲で形而上学的仮説に基づいた議論であり、前半の章における脳神経学的考察と比べると説得力は格段に劣ります。また、アインシュタインやカール・セーガンなどの物理学者の言葉を、いかにも彼らの仮説の傍証のように引用しているあたりも感心できません。<P>その様な本!の欠点をあげつらえばきりがないですが、それでも彼らの真摯な試みおよび考察には敬意を表さざるを得ませんし、正直言って私は本書を読み終えてかなり心地よい知的満足感を覚えました。それ故、本書には5つ星を捧げたいと思います。脚注や参考文献もしっかりしており、監訳者がイギリス留学経験もある専門家であることから訳文も的確で読みやすい点も評価できます。

「神とひとつになった」とか、神秘体験、なんて言うと一歩引いて眉をしかめ思考停止してしまいそうですが、著者たちは本書のタイトルどおり、「脳(人間)はいかにして神を見るか」、という疑問を持ち、解明しようとしています。1章~3章で脳の基本的な構造や機能について概観し、4章からは、人類がどのように神話や神、また宗教の儀式などを発見してきたのかを脳の神経学的側面から推測しています。<P>本書を読んで、ガチガチに特定の宗教にはまっている人なら怒りで言葉も出ないのでは?と心配したり、また科学一辺倒で神なんてない、と考えている人なら興味も示さないかもしれません。私は、どちらかというと科学寄りですが、最終章の「神はなぜ消えないのか」まで読み終えた時、(僕のたってる大地=考えがそんなにも頑丈だとは思えない、神秘体験をした人の方があっているのかも)という、ありきたりだけど自然にそんな感情になりました。著者たちが読者に、私が感じた気持ちを持ってもらうよう意図していたのならば、私の脳は著者の意図どおりになりました。<BR>ちなみに個人的に面白かった箇所は、<P>4章、ネアンデルタール人の神話<BR>5章、考えを行動に移せという指令<BR>6章、求心路遮断<BR>7章、「死の確実性への認識」という重荷<BR>です。7章はビリビリきます。

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