先日(二十四日)、E.サイードが亡くなった。<BR>享年六十七才、死因は白血病だったという。<P>本書は「オリエンタリズム」という言葉に含まれた、<BR>多分に西洋的なものへの批判文だ。<BR>その思想史上の偉大さは、今さら私が語るまでもあるまい。<BR>我々からして既にこの本を西洋的な目で見ている――。<BR>そのことに気付いた時、必ずや得るものが有るだろう。<P>言い方は悪くなってしまうが、これを機会に一読をお勧めする。<P>それにしても惜しいひとを亡くしたものだ…。
オリエントは東方の他者として存在するのではなく、オクシデント(西洋)の中にこそ存在する。オリエントとは、支配者と従属者、この力関係の中でオリエンタルなものとされた、現実と完全に符合することの無い他者イメージであった。本書ではいわゆる西洋と東洋の認識の中で書かれているが、様々なシーンに適用可能な、例えば日韓関係を考える上でも重要となる感覚がちりばめられている。我々の認識する他者とは、我々自身に内在する他者であり、決して現実の他者そのものではない。歴史、政治、思想、哲学、地域研究、あらゆる分野に携わる上で、必読の書であろう。