深く思考された良質なエッセンスを、スルスルっと吸わせて頂く様な本でした。面白い!<BR>会社っていったい何のか、東大やMITなどで30数年経済学を研究され最近は法学も深めている現東大経済学部長が、一人の研究者としてするどく、何よりもわかりやすく斬っている。<P>そう、そもそも、「法学」が出てくるのが面白い。経営の本などで組織を語るときに、申し訳程度に会社法などが出てくるし、コーポレートガバナンスなんかでも、法律的なことが語られることがあるが、今までただの一度だって面白いと思ったことは無かった。それがすこぶる面白い。モノみたいにM&Aなどで扱われる会社、しかし資産を所有しそれ自体が生きているヒトみたいな会社、その論争などにも筆者なりの答えを出し、納得させられる。<P!>特に、近代社会の重要な条件として奴隷的でない主体的な自由をもった「ヒト」という定義に関係して、会社が「株の持ち合い」で、「会社自身」が会社の所有権自体を実質的にもつことで「ヒト化」していく話などは、とても刺激的な話だった。これは様々な組織内の話、欧米式経営とのギャップなどとも深く関わる。<P>差があることが至上命題になってきた現代経済の歴史的背景や、IT、金融、グローバル化の変革との因果の整理、そうしたポスト産業資本主義や法解釈など、いくつものストーリーが組織で働く等身大のサラリーマンである我々へ、起業家マインドを期待してくる。困難ではあっても、魅力的な社会、未来、その組織、そこでの働き方、そうしたものを分かりやすく伝えてくれた。<P>読後にとても爽やかな気持になった。
大変に読みやすい本である。すらすらと読み進んでしまうが、我々が常識だと思っていることをくつがえす見解が随所に入っている。ふつうのビジネス書が常識をくり返すだけにとどまるのとの大きなちがいである。中心にあるのは「会社」そのもののしくみを明らかにする法人論であるが、それが著者が以前からくり返し論じてきた資本主義論と見事に組み合わされている。知的興奮を覚えると同時に、今まで見えなかった「会社」というものが見えてくる。
新しい時代についてかかれた本はたくさんあるが資本主義が変化してきた結果として新しい時代が訪れたという視点から書かれた珍しい本です。今までに読んだ新しい時代物の本に今ひとつ納得出来なかったところがあったが変化とともに利潤の源泉がどのように変わってきたか。変化の中で会社の役割がどのように変わってきたかまた変わると考えられるのか。という論理で書かれており非常に納得感が高かった。ただ、今後会社の役割が人的資本の蓄積に比重が高くなるとされているが、株式持合いに変わる法人実在説的会社を維持する方法についての記述が無かったのが残念。