北海道浦河にある精神障害者の共同施設「べてるの家」。この「べてるの家」での物語は、決して精神障害者の社会復帰成功物語とかいった美談ではない。それどころか、まったく逆の泥臭く苦悶の日々なのである。問題があっても解決しない。問題は抱えたままにしておく。我々が常識と考えていることが覆されてしまう。<P>そして、本書は非常な力を持って読者に迫ってくるのである。それは、人として根元的な部分で誰もが持っている「弱さ」を通じて、自分自身を照らし出すからに他ならない。<P>私たちは、物事を判定するとき自分の価値基準の中で相対的に判断する。本書を読むと新しいものさしを手に入れることができる。おそらくそれは、あなたが今持っていないものであり、このようなものさしがあったのか!と思うに違いない。<BR>生きるとは何か この「べてるの家」の話を通してあらためて自分の生が問いかけられる。
この本は、とても感動的な本だ。<P>「精神障害者」を理解したいと思って読んでみたら、実際には、読みすすめるうちに自分自身が理解され、自分の弱さも受け入れられたような、あたたかい安心感につつまれていくのを感じた。<BR>「べてるの家」も、そういう場所なのだ。<P>たとえ精神分裂病のような重い病気でなくとも、「うつ病」「ひきこもり」「不登校」など、今の社会はなんだか息苦しくて、うまく生きていくことができない、そう感じている人は多くいるはずだ。そういう、うまく生きられない人達を、医者や、教師や、いろんな「健常者」たちは、なんとかして自分たちと同じ「健常者」に近づけるべく努力して、「管理」して、ますます苦しみを増加させるようなことをしているのではないか。<P>しかし「べてるの家」では違う。あくまでも主役は、精神病で長い間苦しんできた人々であり、ここでは、「病気のままでいい」「安心してさぼっていい」「管理と規則を排除する」など、普段私達が耳にする言葉とは正反対のことが言われている。それでも驚いたことに、「べてるの家」のメンバーは自分達で会社をつくり、「誰も排除しない」と「利益をあげる」を両立させることに成功しているのだ。<BR>そして、そのためのキーワードは「つながり」と「言葉」である。<P>騒ぎと争い、病気と発作と混乱、問題だらけの「べてるの家」だが、この本を読んでいるとなぜか、不思議なやすらぎをおぼえる。<P>この本はいろんな意味で驚きの連続だが、読み終わってみると、自分自身が深い部分で揺さぶられ、新しい人生を生きて行けそうな不思議な希望が生れている。<BR>この本を、できるだけ多くの人に読んでほしいと思う。