本書は、物理学の英雄の一人、W.ハイゼンベルクの自伝です。副題「私の生涯の偉大な出会いと対話」からも窺われるように、友人達との対話から成る本書は、親しみやすく、読者に忍耐を要求することもありません。著者と対話するのは高校の友人からアインシュタインまで様々。それぞれの対話から、読み返す度に新たな宝が見つかるでしょう。<P> 中にはコミカルな対話もチラホラと。山野が好きな著者と夜の街が好きなパウリとの対照的なキャラクター同士の対話は結構笑えます。物理学を志す若者はモチロン、一般の読者も真剣な楽しさを味わえる貴重な一冊です。<BR> 巻頭には写真も多数掲載されており、お勧め。なお、若き日のハイゼンベルクはカッコイイ。<P> 本書は若者から老人まで愉しめる、等身大
第二次大戦後,ナチスに協力したのではないかとの嫌疑をかけられた物理学者ハイゼンベルグの自己弁明の書だが,そのような時代の文脈を度外視しても,これは第一級の時代の証言であり人生論だと思う。最近『日本経済新聞』の「半歩遅れの読書術」で紹介されたために,いま爆発的な売れ行きだそうだ。この手のしっかりした本が「爆発的に」売れるというのは,日本がまさに曲がり角のきており,古典に学ぼうとの気持ちが復活してきた証なのだろうか。それとも,単なる気まぐれか。気になるところだ。
量子論の形成の草創期からその完成以降までの経過を,実際にその中心的役割を果たした著者の人生とオーバーラップさせて、著者の経験を元に語ったものである.主に量子論の形成に携わった人物との対話によって話が進んでいくのであるが,その内容は非常に哲学的で,読者は注意深く読むことを余儀なくされる。そして著者が十代の高校生のころから非常に卓越した哲学性を備えていることに驚かされるが,その若きころの対話の数々を克明に記憶し,論旨を外すことなく正確に再現してみせていることにはさらに驚かされる.また,青年期を二度の大戦に巻き込まれながら,この天才物理学者が歴史と時代をいかに捕らえ,思想や行動に反映しているかというところも一読に値する.単に数理物理に駿越であるにとどまら!ず,あらゆる事物に対して,冷静な判断と,先見性のある思考を展開できる著者はまさしく天才と呼ぶにふさわしい.