「心理学」を本格的に学ぶ場合のリファレンスとしては、現在、もっとも優れたものである。執筆陣も執筆項目も現在の心理学会の第1人者が執筆している。内容も項目の定義も簡潔で最新のものである。この手の辞典のなかには、著者や編者の趣味や「味」が入ってしまい、一般読者が読むとおもしろいが、専門的な勉強には全く向かないものが多いがその点、この辞典では失敗することはない。とくに、大学院受験を希望する場合、(たとえ、臨床心理学コースでも)最低限、この本にあげられている項目については、理解し、説明できるようにしておくことが必要であろう。心理学を学ぶ学生、院生は必携。
1990年代に日本で出た心理学関係の辞典の中では最高水準を誇るものであるは間違いないですが、臨床心理学(或いは精神医学)関係用語の採用が少ないので1980年代に出た類似辞典と比べると内容的に無味乾燥なものになっています。それでも「愛」(p.1)に始まり「ワロン」(p.912)に至る内容は(今日の日本で)心理学を専攻中の大学生程度の必要には十分に応えられるものだと思いますし、「文献」「和文事項索引」「欧文事項索引」「和文人名索引」「欧文人名索引」が付いているので動的な要望にも一応は対応出来るようになっています。 ただし「文献」に関して言えば本書には人名・書名・出版年しか書いてありませんが(例えば本書には「Allport,G.W.,the Nature of Prejudice,1954」としか書いてありません)、こういう場合には出版社名(上記の例では「Addison-Wesley」)も明記するのはアカデミックな世界では常識の中の常識なのですからどうせ「文献」を付けるのなら最低限のルールだけは守って欲しかったです。