経営学の立場から「人的資本」論の重要性を説く伊丹氏の著作。<P>題名だけ読むとなんだかすごいことがかけそうだが、<BR>実際にすぐには「創造的」な論文はかけません。<BR>論文執筆中の頭安めに気軽な感じで読んでください。<BR>論文執筆中であれば、「なるほどなー」と思うところ多し。<P>例えば、伊丹氏は「文章を書くこと」の重要性を説きます。文章を書くことは論理をつなげることだから、そこで詰まるうちに自分の認識の浅さがわかる。それは自分自身の理解が浅いから論理的に組み込めないのであって、こういうことは、自分の中にある考えを文章という形で「客体化」して初めて気づく。こういうことを伊丹氏は言います。<P>確かに、自分の頭の中では論理的にクリアーになっているつもりでも、いざ文章化すると「ありゃー?」ってうまくいかないこと、ありますよね。こういうことをそれこそ「文章化」して、他人にわかりやすくかけることは伊丹氏のすごさだなと思う。<P>けれども、基本的には自分の頭の中で考えて論文を書きましょう。実際に論文を書くのはあなた自身です。論文執筆中の気休めに読んでください。
無数にある「論文・レポートの書き方」マニュアルとは一線を画すユニークな本である。それは本書が単なる方法論や技術を手短に教えるのではなく、いかにして「創造的な」良い論文を書くかを真摯に議論しているからである。しかしながら、すでに何人かの方がレビューに書かれたように、決して初めて論文らしきものを書く初心者向けではない。<P> むしろ本書は学生の論文指導にあたる大学教員などにお勧めではないだろうか?専攻分野は社会科学でなくてもよい。たとえば、本書の「現実の社会」を「作品」に、「理論」を「批評」に置き換えて読めば、文学の論文指導をする教員にも役に立つはずだ。
私自身も研究者として修士・博士論文執筆には苦労した経験をもっているので興味深く読むことができた。ただ、この本で書かれてあることは、これから論文を書こうとする人が読んでも抽象的すぎてピンとこない内容のものが多いと思う。「京の町屋」だとか「風呂の中のめがね」などの抽象的な比喩を使う代わりに、著者自身の著作執筆の具体例に挙げて説明すればもっとわかりやすくなったと思う。ひとつ気になったのは「論理重合法」というリサーチメソドロジーの話だ。この考えはアイデアとしてはおもしろいが、少なくとも欧米の研究者の間では全く認知されていないものである。本著を読むと多変量解析や事例研究の欠点を克服すべき革新的なメソドロジーであるような感じを受けてしまうが、いまだ学会で認知!!れていないメソドロジーを本著のような初学者も対象にした本の中で紹介するのは少し野心的すぎるのではないか、と思った。