心理統計を教えるというのは、きわめて難しい。文化系で心理学に統計の授業があるなんて知らなかった学生や、シグマなどみただけで吐き気がするような学生に、分散分析くらいまで理解させなければならないからだ。そのため、心理統計の教員は人気の面でたぶん、他の数学を使わない心理学の教員に比べて不利であると言ってもいいくらいである。しかし、その分、これを担当する教員は、いったいどうしたら、このような学生にうまく統計や検定について教えられるか、日夜苦心しているのも事実である。最近、何冊か類書が出されているが、できるだけ数式を使わずに統計を教えるというのもその努力のひとつのあらわれである。この過程で、正確さや厳密さは失われてくるが、それはある意味しょうがないことであ!。したがって、この種の本を読んでみて、「最新の動向とあわない」とか「数学的に厳密でない記述がある」とかいうのは的はずれな批判であろう。そう思う人は、ちゃんとした統計書(あるいはそういう論文)を学ぶべきである。また、「この本で十分だと思う人がいる」のは、読者の責任である。この本が導入書のベストだとは思わないがこのボリュームでこの内容をまとめた努力は評価できる。心理統計の初心者で、本当に数学が嫌いな人が、最初に手に取る本としては、十分おすすめできる。この本で挫折するようであれば、少なくとも大学院進学はあきらめた方がいいだろう。しかし、この本なら、数学嫌いなあなたでも、たぶん、読みこなせます。
本書は,数学的な知識を極力導入せずに統計学の解説を丁寧にしている良書といえる.臨床心理士指定校を目指す人のバイブル的な教科書になっているが…<P><BR>1.数学的知識が記述されていないため,曖昧である.<BR>2.本書のみで統計の勉強は十分と勘違いする人が多い<BR>3.記述されている内容が古いので海外の標準と合わない<BR>4.その結果,発展的な統計の学習に際して,妨げになる.<BR>という理由で勧められない.<P>私もタイトルに惹かれて本書から統計学の入門をしたが,<BR>その結果,色々と苦労した.<P>例えば,t検定の説明を,ほとんど使い方のみしかしていないため<BR>t検定を行なう際の問題点がわからない.<BR>つまり,区間推定をおこなったり,そもそもt検定なんてしない方がいいことも気づかないのである.<P>統計学初学者にとっては,統計学の壁は分厚く感じるが<P>「南風原朝和(2002)心理統計学の基礎―統合的理解のために.有斐閣アルマ」<BR>という<BR>1.初心者向けで<BR>2.幅広い統計学の知識を導入し<BR>3.新しい手法も紹介している<BR>良書が出版されたため<BR>それを読むべきである.
本書は統計学の入門書ですが、他の統計書になら載っているような数学的証明を大胆に省き、かわりに統計学の基本的な「考え方」を重点的に丁寧に解説しています。練習問題も豊富で、様々な例題が登場しますので、これ一冊で統計学の基本的な考えた方はずいぶん身につくのではないでしょうか。<P> 数字に弱い文系読者で、統計学の初歩以前でつまづいてしまった・・・・・・という方に特にオススメします。あるいは、そうなる可能性のある人に、初めて読む統計学の入門書としてオススメします。統計学初学者にとって重要なのは、数学的厳密さではなく、考え方だと思うからです。<P> 統計学初歩以前と書きましたが、だからといって、統計学をある程度知っている人にとって必要ない本かというとそうでもありません。統計ソフトでt検定のやり方は知っているけれど「その意味」はよくわからない・・・・・・という方、「カイ二乗検定ってどういう考えにもとづいているんだろう?」と疑問に思ったけれど数式の並んだ教科書を眺めてもさっぱり、という方、そういう人にも充分オススメできます。<P> ただし、やっぱり本書だけではものたりません。同じ著書らによる『心理学のためのデータ解析テクニカルブック』と2冊一緒に(あるいは続けて)買うのが良いと思います。