62歳。ベトナム戦争で、空爆される地上側から取材を受け、それから世界の戦場を渡り歩いてきた現役戦場カメラマンの書いた本である。<BR>自称、還暦を過ぎ、妻に愛想を尽かされ、ささやかな年金をもらい、バンコクでスローにいい加減に生活するハシやん(橋田氏)。<P>「戦争取材でもやって、心にも体にもヤキを入れる必要がある」とか言って、偽造ビザを作るところから本書は始まる。<BR>そうなのだ。<BR>この人は内乱とか動乱とかそういった世界で命をはることにしか、生を見いだせないのだ、と、思う。<BR>ただ彼の清いのは、戦場記者は『戦場』から状況は語れるが、『戦争』は語ってはならないという哲学を貫き通していることだ。<P>戦争は政治的利害の衝突であり、経済や資源を巡る戦いである、と。<BR>だから、ヒロシマヤ長崎の悲惨さを語る(状況)ことと、戦争になぜ国家が突進していって、あんな風になってしまったのかを、同一フィールドで語ることは、違うことなのだ、と、戦場の言葉を語るハシやんにはリアリティがあるのだ。<BR>哲学じゃなく実学といった方がふさわしいかもしれない。<P>極論過ぎる嫌いはあるかもしれないけど、タイトルもまるでどこかのベストセラーにわざと似せているのも、ご愛敬だ。<BR>ゆけ、シルバー・アイアンたち!
61才の現役「戦場特派員」橋田さんの奮戦記。とにかくバグダッドに入るために、そしてまた、撮った映像をなんとか日本に送るために、たった二人組の「アイアンシルバー」フリージャーナリストたちは、あの手この手で柔軟に進んでいく。ユーモアたっぷりのおもしろさの中に、鋭い批判が入るのは、ベトナム戦争からずっと戦場を取材してきた豊かな経験から。そのお人柄から不思議と元気の出る戦場ドキュメントでもある。
不肖・宮嶋の上官といわれる橋田信介氏のイラク戦争取材記。<BR>ベトナムを始め湾岸戦争、カンボジアの内戦、ボスニア内戦、アフガン戦争などの戦場を、<BR>フリージャーナリストとして撮影し続けてきた人の過酷な体験とはうらはらな、<BR>ぽわんとした文体で綴られるイラク戦争は、平和な日本に住む私の後ろ頭を直撃してくれました。<P>戦場の現実を淡々と描写していく文章は、戦場という場を見た人ならではのものです。<BR>61歳の現役カメラマン、橋田信介氏の仕事は平和に慣れきった日本人にぜひ知ってほしい。