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精神と自然―生きた世界の認識論 ( グレゴリー ベイトソン Gregory Bateson 佐藤 良明 )

小品ながら、ベイトソンの主著というべき作品です。「人間の認識」についての諸概念を整理するという意味では、人類学や心理学のみならず、学問に携わる人すべてにとって有用と言うべき本でしょう。内容も「ニューギニア部族」「精神分裂の世界」「学習するイルカ」「パブロフの犬の実験と考察」「生物の進化」「大学の教育方針に関するメモ」等々、頁数の割りに大変盛り沢山なものとなっています。生物的、社会的事象に密着した論を展開するベイトソンの視点は、考えの基本に据えている「前提」が実に力強く、読者を引き込みます。

「精神の生態学」の次の著作で、翌1980年にグレゴリー・ベイトソンは亡くなっているので、最後の主著といえます。「生態学」のほうよりコンパクトに纏められているといえます。この本は宇宙の森羅万象ありとあらゆるものを一つの視野に納めようと扱っています。ドゥルーズ=ガタリの主著「千のプラトー」に影響を及ぼしたグレゴリー・ベイトソンですが、マイケル・ポランニーの「個人的知識」「知と存在」と、サイバネティクスから影響を受けています。(というより殆どパクリ)ポランニーから強く受けているのですが、ポランニーがサイバネティクスに否定的なのに比べてグレゴリー・ベイトソンはポランニーの考えを当時の科学の潮流であったサイバネティクスと妥協させようとして戸惑っているように見えます。このことはあまり知られてませんが、両者を読み比べればわかることです。

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