~ シェル・シルヴァスタインの『おおきな木』は、『ぼくを探しに』(原本は The Missing Piece)や『ビッグ・オーとの出会い』(原本は The Missing Piece Meets the Big~~ O)よりもへたに描かれた絵本のようにも見えますが、結論を読者にゆだねているので、多くの人々にとって「考えさせられる本」になっています。リンゴの木を「与える側」、人間のほうを「取る側」と割り切ったにしても、その関係の見方は千差万別でしょう。私達は多くの「リンゴの木」のおかげで生きていますが、それらの「リンゴの木」がどうなるのかをあまり~~考えずに暮らしているものです。空気も水も土も「おおきな木」なのですが、昔は売り買いすべき対象ではなかった空気・水・土も、色々な商品にされて売買されるようになってきています。『どうやって空気を売るというのか』は、古き良き時代の警告にすぎないのでしょうか…地球という「おおきな木」は、人類が何をしてもいつまでも「ぼうや、こしかけてやすみ~~なさい」と言ってくれるのだろうか?~
鮮やかな緑色に赤が効いている表紙にまずひかれました。しかし中は全て白黒です。マジックでお絵かきお父さんが子供に歌でも歌いながら描いてあげたような素朴な画風。しかし実は実はデザイン的にとても計算されています。無駄な物を一切描き込んでいないから、ここまで完璧に美しい紙面が出来上がったのかな。また簡素な画面は、りんごの木のぼうやに対する一途な愛をより強烈に演出し、ページをめくる毎に心がちくちく傷みます。無償の愛、変わらぬ愛、報われぬ愛、相思相愛。。。いろんな愛の形がこの本に凝縮されていて、はたからみたら「リンゴの木!!!目を覚ませ!」という場面も多々あるけれども、最後は彼女も報われたような。好きになったらとことんまで!なのかな?とてもお勧めです。
偶然に出会った、たった一度しか読んだことがないけれど、心に残って、忘れられない一冊。決して子供向けとは思えない、「自己犠牲」と「幸せ」について書かれている、シンプルな本。ぜひ、チャンスがあったら、手にとって読んでほしい。最後のページを見た瞬間、ジーンとくるものが、あるはず。