明治維新から100年の間、侵略や戦争によって日本の地理的境界は目まぐるしく変化した。<BR>それに伴って「日本人」の定義がどのように変化し、認識されるようになったかを、政治家、軍人、言論人、そして植民地住民とあらゆるサイドから見つめ直した素晴らしい本です。<P>沖縄についてかなりのページが割かれており、様々な考え方が紹介されているので興味深い。たとえば「日琉同祖だ」「いや別民族だ」と対立する主張も、発言者の立場(民族や政治的なポジション)によって意味合いが異なってくることがわかる。その背景には複雑な民族意識や利害関係があったからだろう。<P>欧米から輸入した「国家」「民族」という新しい概念に日本が翻弄されていくプロセスを伺うこともできる。<BR>ざっと通して読んだが、「日本人」とは?その問いに対する答えは簡単に出そうもない。
小熊氏の博士論文。<BR>「日本」「植民地」という二項対立ではなく、そこに「欧米」を加えた視点で<BR>・「日本人」の境界の設定<BR>・「日本」「植民地」「非日本」「非植民地」といった概念の再考<BR>・「日本」対「植民地」の二項対立に含まれない部分の検討<BR>をしている。<BR>アイヌ・沖縄が対外的に包摂され、体内的に排除されたとする分析は鋭い。<P>アイヌ・沖縄政策のコスト論もおもしろい。<BR>この本を読み終えると(大変、時間がかかりますが・・・)<BR>「日本は・・・だから」とか「日本人は・・・だよ」という言い方が出来なくなる。小熊氏の経歴もおもしろい。学部時代は理系だったとは・・・。