アイデンティティの音楽―メディア・若者・ポピュラー文化 みんなこんな本を読んできた アイデンティティの音楽―メディア・若者・ポピュラー文化
 
 
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アイデンティティの音楽―メディア・若者・ポピュラー文化 ( 渡辺 潤 )

 音楽がそれを消費する者のアイデンティティと密接に関係しているという主張は近年至る所で目にする。たしかにそれはそうだろうとも思う。特に異議はない。そして本書もそのような事を語った本である。<P> ただ評者が不満なのは、さまざまなポピュラー文化の中で特に音楽という媒体がアイデンティティ政治と絡み合う場合、他の様々なポピュラー文化と較べて何が違うのかという点がほとんど論じられていないという点である。この点では本書もこれまでの例に習ったままである。<P> せっかくポピュラー音楽を採り上げて考察するのであれば、ポピュラー文化の一般論から一歩踏み込んで、それが音楽であるという事により意識的になって欲しかったと思うのだが。

 「世界とはどこにあるのか」「私はその世界のどこからきて、いまどこにいて、これからどこへ行こうとしているのか」こんな問いかけがいつも心の中にある。同時代を生きてきた本書の著者は、その問いをアイデンティティと呼び、「音楽」をキイワードにして、こたえをさがそうとしている。<P> とりわけアメリカでロック音楽がどのように生まれたのか、その歴史的な背景をていねいにまとめている。人が音楽を生み、音楽は物語となって、さまざまな環境で生きている人びとと出会っていく。そうして物語は、それぞれの「私の世界」で、あらたな物語を育てていく。<P> 読み進めていると、著書自身がどうやって自分のアイデンティティを求め続けてきたのか、その道筋がだんだん見えてくる。だからだろうか、私は!いつのまにか、60年代末からの平和運動のなかで「男達の議論」についていけず「ことば」を失っていた頃のこと、大学をやめたこと、運動で知り合った友だちを頼りにアメリカに行き、サンフランシスコやバークレーで元気な女たちに「自分のことばで語る楽しさ」を教えてもらったことなど、これまでの自分のジグザグな道をじっくりとふりかえっていたのでした。  ひとつのキイワードを持ちつづけるという著書の手法、生き方はとてもわかりやすい。「ことば」をキイワードとして、自分の心の中の問いのこたえを探し続けよう、と思ったのだった。<P> 本書は、問い続けようとする人たちへの心のBGMである。

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