日本語では衝撃的なタイトルだが、学際的なまじめな本だ。原題は"Anatomy of Love"(つまり「恋愛の構造」)だ。内容は、恋愛感情や結婚制度の歴史と原因を、まじめに解説している本だ。生物学、霊長類学、歴史学、考古学、統計学、社会学、経済学、心理学、文化人類学などの成果を、うまくとりまとめているし、読みやすい好著だ。<BR> キリスト教社会で重視される、一夫一妻制が農業社会(特に鋤の利用)によって、発生したという説明は十分納得がいく。農業社会が終わり、女性が外で働くようになったことは、狩猟採集時代に戻ったのと同じで、未来の恋愛・結婚が狩猟採集時代のそれと同様になっていくという、本書での予測がどうなっていくか楽しみだ。
「話を聞かない男、地図が読めない女」の人類学的分析バージョンというべきか。性愛の最も濃密な時期(下世話な表現をなるべく避けているつもり)というものは確かにあり、濃密でなくなる、つまり「飽きが来る」ということは率直であれば誰もが認めるところかもしれない。カップルが町を歩きながら、男は他の女のボディラインを視姦し、女はレディス・コミックのシーンを思い浮かべるということが、ホモサピセンスのごく自然なリズムとして、起こりえる。関係の危機には動物的な側面があるということだ。逆に、関係が終わったと直感してしまうとき、それは身体のリズムのごく一面にすぎないのかもしれない。「結婚とは美しい誤解である」という言葉がある。だが、終わりもまた錯誤かもしれないのだ。結婚生活に対する倫理観というものに、人類はまだまともな答えを共有しきれずにいるが、大いなる自然をいかに社会生活の枠組みに取り込むことができるかを、我々は模索しているのかもしれない。
題名からは「終わる」ことに焦点を当てた書籍のようですが、始まりについても生物学的に書かれており、これから「愛の始まる予感」がする方、「彼女(彼)が私をどう思っているか分からない」方にも参考になる本です。もちろん、この本を読めば「終わる」理由の1つが分かるのですから、「終わらない」ようにする努力もできるわけです。