世界中を放浪し、論文を書きまくり(なんと1日19時間数学の問題を解き続けたこともあった!)、自分専用の言葉を使った奇人数学者のドラマ。また他の数学者のエピソードも入っている。もちろんただの奇人変人録ではなく、きちんと数学の話題も入っている。数論、グラフ理論、無限、フェルマーの最終定理と一見難しそうな奴らだが、きちんと頭を使えば理解できるようになっている。伝記としても面白いし、また数学書としてもよい。これで数学に興味を持ったなら「フェルマーの最終定理」(サイモン・シン著)を読むことをお勧めする。
時々超人に会う。山で麓から山頂まで猛スピードで走っていく人。ピザのエル版を10枚あっという間に平らげるひと。しかし、この数学者は歴史上存在した全ての超人が全員一斉にひざまづく恐ろしい男である。彼はただ数学のためだけに、妻も子も持たず、家も財産もなく、最低限の生活用具をカバンに入れて世界を放ろうし、一日20時間以上数学の思索に没頭する。少年時代から80才台で没するまでそれを続けたのだ。世界中の学者の家に早朝から押し掛け、朝から一緒に何日もぶっ通しで数学の超難問を斬り捨てていく。押し掛けられた学者も世界的学者だが彼のパワーに愕然とし、数日後にぶっ倒れる。そこで彼は悠然と次なる獲物(数学者の家)に向かうのだ。彼が片方の目の手術中にもう片方の目で数学論文を読んでいたという下りを読んでその病的なまでの執着心に恐ろしささえ感じる。この本を読んで自分はまだ努力が足りないとみるか、単なる変人の物語とみるか、読者の判断である。
どこにも所属せず、定住地を持たず、古びたブリーフケースには替えの下着とノートのみ。世界中を放浪しながら、一日十九時間、数学の問題を解きつづけたという伝説の数学者、ポール・エルデシュ。四大陸を飛びまわり、ある日突然、戸口に現れて言う。「君の頭は営業中かね?」<P>こんなこといいながら神様をライバルだって言ってのけちゃうエルデシュ。世間じゃ数学って計算だって思っている人が多くて悲しくなりますが、これを読めば美を求める、人間の最高の娯楽だと少しは伝わるんじゃないかな。僕は物理屋さんであって数学屋さんではないですが、数学屋さんにはいつも最大限の敬意を表します。そしてエルデシュこそ僕らが考える理想的な数学屋さんであり、夢のような人生を送った憧れの人です。今度生ま!変わっても物理屋になりたいけど、数学屋さんにも憧れちゃうなー(*^_^*)