エレガントな~というタイトルは、某数学雑誌の愛読者ならニンマリし<BR>てしまいそうな名前ですね。宇宙の問題に対するエレガントな解答ここに<BR>ありというところでしょうか。<P> この翻訳本は索引まで含めると574ページもあるぶ厚いものですが、<BR>およそ3分の一(188ページまで)は、相対性理論と量子力学と<P>いった、いわゆる現代物理学の説明に集中していますので、<BR>この辺の現代物理学が抱える矛盾点が大体分かっていらっやる方は<BR>読み飛ばしてかまわないでしょう。<P> 超ひもの理論は大体分かるという方も、本書343ページあたりから<BR>始まる、著者ブライアン・グリーンさんのカラビ・ヤウ図形の研究<P>成果と超ひも理論の関係は興味をそそられるところと思います。<P> 5つあった超ひもの理論がM理論によってまとめられたことが、<BR>本書411ページあたりから述べられていますが、この超ひも<BR>の理論自体、もっと大きな理論系の一部である可能性は大きく、<BR>例えば「超ひも理論はツイスター理論によって再構築されるべきとの考えが個人的には好きなん<P>ですが、本書544ページの8に<BR>あるように、そのあたりは明確に切<BR>り捨てられてしまっているのが残念です。<P> 本書の原書の初版確かは1999年ですが、内容的には<BR>1997年までくらいの情報でまとまっているようです。<BR> <BR>例えばブレンにつては、420ぺージから423ページ<P>にかけて、ひも以外の可能性と題してほんのちょっと述べて<BR>いるだけで、ストロミンジャーとヴァーファのブラックホール<BR>についての計算の話は、ブレンの話と全く無関係のように451<BR>ページに出てくるし、<BR>Dブレーンという言葉そのものが出てきません。<P> またカルーザ クラインの理論等、高次元の物理学の固まり<P>のような内容になっているのに、なぜそういった次元が出てくるのか、<BR>手がかりすら示されておらず、読者にただ見えない次元が沢山あると<BR>不思議な感じを与えるだけの内容となっています。<P>(2004年2月追記)<BR> 最近、著者ブラングリーンさん主演のDVDが発売になりました。<BR>この本の内容をかいつまんでわかりやすく映像化したもので、<BR>この本と同じ<P>The Elegant Universe<BR>というタイトルです。<P> エドワード・ウィッテンさんなど有名物理学者も<BR>総出演でお勧めです。<P>
最初は原著に挑戦したけど、途中で挫折してしまいました。<P>幸運なことに予想より早く邦訳が出たのはうれしかった。分量が多いので読むのは少し力がいるけど、とにかく読めば、相対論から超ひも理論までの全体像が把握できるのがいい。著者はたとえ話を豊富に使って、素人にも理解しやすいように解説していて好感がもてる。またCGを駆使した立体的な図が更に理解度を高めてくれる。一般相対論とマットの上のボールの比較を単なるアナロジーとしてではなく、そこから更に突っ込んで解説してくれるのなど充実したサービスの本である。<BR>同時期に出たホーキングの本と本書はよく比較されるが、前者は宇宙物理全体を概観した本であるのに対し、本書はあくまでひも理論に的を絞っている。<P>最近は相対論や量子力学の一般向けの本が多く出版されるようになったが、あいまいな内容の本もある。しかしエレガントな宇宙の著者は専門の物理学者で、その心配はない。一部の専門家の間でしか理解されていない難解な分野を、これだけ分かりやすく説明した本は多くない。著者の功績はとてつもなく大きい。<P>訳はベストではないが随所で苦心の跡が見られる。これだけの大著になると、完訳と称して実は巻末の原注などが割愛されることがあるが、その辺もちゃんと邦訳に収めた訳者は素晴らしい。ただ、訳にひとつコメントするならば、邦題の「エレガントな宇宙」は直訳すぎる。私的には「華麗なる宇宙」なんて訳が気に入っている。<P>全ての人に本書を読んで欲しい。また、相対論は間違っている系の話を信じている人はぜひとも読んで欲しい。
スーパーストリング理論の名前を私が初めて耳にしたのは私が物理の大学院生のときだった。その後この理論がどのような発展を遂げたのかずっと気になっていた。空間にはもっと次元があるという話は聞いていたがそれがいったいどのような根拠によるものなのか?この本はそうした疑問に答えると同時に久しぶりに知識欲をたっぷりと満足させてくれた1冊である。<P>難しい数式なしにこれだけわかったようにしてくれる本を書けるのは著者の理論に対する深い理解がなせる業である。物理を学んだ学生なら誰でも「スピン」の意味するものは知っているだろうが、誰がそれを初めて言い出したかをフルネームで言える人は少ないだろう。そうした資料をそろえるだけでも大変なことだとわかっているので、これだけわかり!!!すく面白い本を著した著者の力量には頭が下がる(ほかの方の批評にもあるように誰がある理論や発見に貢献したかという記述にはいくらか偏りはあるようだがその辺は大目に見るとして)。<P>また、内容と同時に翻訳本であることを感じさせない二人の林氏の翻訳も見事なものである。ページ数は多くても2日ほどで一気に読破できるのは翻訳が優れていることも一役買っているのではと思う。(読んでいるときは気が付かなかったが)<P>超ひも理論は実験で検証できるところまで来ていないため、いまだ批判の絶えない理論でもある。筆者はもちろんそのことにも言及しているし、当然のことながら筆者はひも理論を支持する側の人間なので理論を援護はするがけっして読者に押し付けようとはしていない(巧妙な話術で引き込!!としていると見方によっては見えるかもしれないが)。また実験で検証できないとはいっても実験に無関係に生まれてきた理論ではなく、もともとは核相互作用を説明するために生まれてきたものだ。いったんは退けられたものの重力の素粒子(グラビトン)まで包含することができるかもしれない理論として再び脚光を浴びる。また、超ひも理論はブラックホールに関する今までまったく説明のできなかった問題にまで理解の糸口を与える。もちろん説明ができたからそれが正しいということにはならないが、まったく説明ができないのとそれなりにできるのとは雲泥の差である。もし超ひも理論の説明が間違っているとしても、「正しい理論」は超ひも理論の説明のどの部分が間違っているかを解明していくことでおそらく発展!!ていくことになるだろうから。<P>本書を読んで久しぶりにこの分野への知識欲が湧いてきたが、理論はそうすぐに発展するものではないので、また10、20年は待たないと新しい驚きに会えないのかと思うと少し残念である。(フィクションならば類書を片っ端からあたるということも可能なのだが)