徳大寺氏の本を「独断と偏見に満ちた内容だ」などと批判する声もあるようですが、元々評論とはそういうもの。客観的な評論などありえません。それに「間違いだらけ~」出現以前の70年代半ばまでの自動車評論というのは、それはもうひどいものばかりでしたよ。「エンジンもサスも文句なし。ただ灰皿の位置が悪い」などといった、車の本質を評価しようとしない、メーカーの太鼓持ちのような評論ばかりだったんですから(もちろん小林彰太郎氏など例外はある)。若者はこの人を「ただの外車好きのキザなじいさん」などとだけ思わず、その功績を知るべきです。
~今回は新車購入と重なったため、久々に立ち読みではなく購読しました。<BR>自分の愛車は「○○○地獄」で有名なM社製。<BR>もちろんウキウキしながらM社の新型車の論評を読みました。が・・・<BR>「そりゃあ高級車じゃないけど、この書き方はあんまりだ!<BR> 人の言う事なんて当てにならない。人間やっぱり自分の目で確かめなきゃ。」<BR>~~<BR>義憤に燃えながら各社の販売店を回り、試乗車を片っ端から乗った結果は・・・<P>すいません。おっしゃるとおりS社のR買いました。2Lですけど。<BR>掲載車種が少ないのは本音を書きすぎると支障があるのか、語るに値しないのか。<BR>わざわざボーナス商戦後に出版する気遣いが目にしみて泣けます。~
この本は、車選びの本というよりは、徳大寺氏の車の思想書である。まえがきから、いきなり、去年のフランクフルト・ショウで展示されていた、メルツェデスのSLRについてである。この車は、衝突安全のために、量産車で初めて、F1のモノコック構造のシャシーを使用して作られた車で、200キロで衝突しても、助かることもある、F1のシャシー技術に注目し、安全性のために採用したというものである。<P>メルツェデスは車を最初に作ったメーカであり、車の将来に対する展望、哲学は、他の自動車メーカとは比較にならない。そして、メルツェデスのどんな車でも良いから、乗りたくなる。というのである。僕も、この意見には、同意できる。志の高いメーカが作る車に乗ることで、自分の志も高くなるような気がするから。<P>こういう記事を、まえがきにもってくる自動車評論本は、他にない。(しかしながら、カーグラの去年のトップ・トピックスは、この記事であった)<P>それに対して、トヨタの利益優先のパクリ主義を徹底的に批判している(しかし著者は、このことを何年も前から指摘しているためか、少し冷めている文章でもある)。僕も、プリウスには乗りたい(この車も燃費向上という目標のために、トヨタのもてる力を注ぎ込んでいる理想的な車で、昔のシトロエンのような車であると思う)けれど、ウィッシュ(トヨタ・ストリーム)やアルファード(トヨタ・エルグランド)には乗りたくないし、乗っている人の気持ちも、わからない。これらの車に乗ることは、本当に、かっこ悪いと思う。僕ならば、どちらのオリジナルの車も好きではないけれども、乗るとしたら、オリジナルの車を乗ると思う。<P>でも、全てが同意できる記事でも無くて、RX-8などは、未だに肯定していない。僕は、この車に乗ったことがないから、わからないが、ロータリー・エンジンという他のメーカが一切、作っていないエンジン(一時はメルツェデスも試作車を作ったことがある)を今でも作っているのは、凄いことで、その一番の懸案であった燃費を、3000ccクラスのレシプロ・エンジン並みにしたのだから、凄いと思う。<P>ともあれ、年に二回に発行を楽しみにしている、とても面白い本なのであります。