今世紀屈指のメディカルライターが描く、<BR>脳に障害を負った人々の記録。<BR>彼らが生きる奇妙な世界は通常決して見られず、<BR>かつ想像も及ばぬものであり、非常に興味深いといえる。<BR>文句なしの力作。
ショッキングなタイトルに惹かれて、この本を手にとった。いわゆる「健常者」から見れば、「障害」を負い、「異常」な感覚の中に生きている数々の人のエピソードを紹介している本なのだが、単なる興味本位には著されていない。登場する彼ら、彼女らの人生の一部に出会った一人として、著者のオリバー・サックスはこの本を書いている。<P>健常とは何か。異常とは何か。人間とは何か。自分の身体の感覚が無くなった女性が、それを視覚で補おうと闘う(まさにそのリハビリは闘いだ)エピソードが本書にはある。人間の尊厳は病気や異常によって決して冒されないこと。そして、驚くべき可能性をもって、失ったものをリカバーする存在であることを、この本は教えてくれたように思う。
ある時点より現在までの記憶を持たない記憶喪失、目が見えないわけでもないのに人の顔の判別がつかない男。今までの症例の紹介では滑稽で、表面的な好奇心のみがくすぐられる事しかありませんでしたが、この本の中では患者自身の苦しみ、飛びぬけた才能の発揮、そこで著者が感じた事や発見した事を主体性をもってかかれています。科学的な観点と人間的な観点のちょうど中間点のような印象を持ちました。 我々が普段行く病院のお医者さんたちもこのような視点を持ち合わせていてくれたらと思います。