スナークさんのおっしゃるように、トループ苦心の口述筆記を味わいましょう。難しいことは言ってない(音楽理論のところ以外)し、黒人英語ってのがどのようなものか、かなり分かります。辞書にない用法が頻出するし下品な単語も豊富(?)ですが、読み進むうちに分かってきます。badがgoodと同じでmotherfuckerが誉め言葉だなんて、これを読むまで知りませんでした!<BR> マイルスの生涯を彩る数々の「伝説」が本人の口から語られるのが貴重。それ以上に興味深いのはサッチモのにやにや笑いや黒人女性たちの自信のなさの理由を分析しながら、アメリカ黒人の置かれていた状況を述べているくだり。友人だったマックス・ローチあたりと比較して社会的発言の少なかったマイルスですが、はっきり意識していたんでち?ね。<P> マイルス、あるいはジャズに興味のない人には馴染みのない登場人物が多くて退屈かも知れません。しかし(30~80年という)時代を知るには好適の書です。
マイルスの自叙伝。登場人物が非常に多い。<P>一番意外だったのはマイルスが自宅ではほとんどJazzは聴かないでラフマニノフとかストラビンスキーとかばっかり聴いていたというくだりだ。これはギル・エバンスやビル・エバンスの影響が多々あるようだが、凄い意外なことだった。コードから脱却しモード(旋法)に自らの音楽的方向を求めた彼の歩みと重ねてみると時にラテンやロシアの民族音階というものに道標があることは確かに納得がいくことだ。マイルスの柔軟な頭脳はごく自然に『You're Under Arrest』あたりでマイケル・ジャクソンの『Human Nature』やシンディ・ローパーの『Time After Time』何かまで取り上げちゃったりする。次から次へ自らの正しいと信じるものへと突き進む。まさしく『Cool』だ。<P>もう一つ意外だったのがMilesが絶賛を惜しまなかった2人の人物だ。一度もけなすことなく賞賛しっぱなしだったのはドラムスのTony Williamsは分かるとしてもなんとあのPrinceだった。WooMoo。MilesはPrinceの様々な音楽的なアプローチを高く評価している。へぇ、そうなんだという感じだ。<P>逆にむちゃくちゃ悪く言われているのがウイントン・マルサリスでこれまたふーんそうなんだというカンジだ。Milesの視点は非常に興味深いものがある。
読みました。自分はそれほどこてこてのジャズファンというわけではありません。ですがこの本は実に読みやすかった。ぐだぐだと記録や技術論を語る(評論家が書くようなやつ)のではなく、その時その瞬間彼が何を感じ何を考えていたのかがリアルに伝わってきます。とにかく熱い思いを感じました。やはりジャズというよりもマイルス・デイビスという音楽にふれることができる一冊でした。それと昔の薬の影響については考えさせられました。薬が触媒となっていい音楽を生み出したといっても過言ではないでしょうか。ラストの方の文章は彼の遺言のような感じがしてしまいました。最後まで彼のスピリチュアルな姿勢は死んでいませんでした。読めば聞きたくなる、聞けば読み返したくなるような一冊でした。