って映画がありましたが、それのハッカー版ですね。キャッチミーの主人公も、この本で紹介されているさまざまな事例も、人間の思い込みや好意をうまく利用して、とんでもない詐欺をしてしまいます。思わず感心するほどの巧みな詐欺(これぞ知能犯!)と、読み進むうちに膨らむ嘘がばれるかばれないか…というスリルがたまりません。<P>2作の大きな違いは、キャッチミーは古きよき時代にやんちゃな男の子が起こした憎めないお話…で落ちがついたのですが、この作品はいつ自分のオフィスで起きてもおかしくない、かなり現実味を持った詐欺事件の事例集だということ。読んだあとは、今会社勤めをしている人なら誰でも「もしかすると自分のせいで詐欺師にハッキングされたことがあったのかも…」という気持ちに!なってしまうくらいのリアリティがあります。専門書っぽい雰囲気ではありますが、キャッチミーを面白いと感じた方、ミステリーの好きな方にはオススメです。
英語でかかれていることを忘れて一気に読んでしまった。とにかく面白い。いくらファイアウォールを導入し、IDSで監視し、セキュリティポリシーを制定しても、人間を騙せば崩壊してしまう、ということが著者の体験から生き生きと書かれている。詐欺関係の用語だけ押さえれば、文章自体は平易で読みやすい。ありきたりのソーシャルエンジニアリング(ごみ箱あさりなど)では満足できない人にお薦め。
実に単純な手口に、次々とひっかかっていく人々の話を読んでいると、いかに人が「他人を信用したがる生物であるか」ということ思い至る。ここまで単純だと、むしろ騙される側の人々がおとおしくなって気さえする。これはつまり、人間が社会的動物であるがゆえに逃れられない本能なのかもしれない。だとすると、騙す側はいわば捕食者であり、騙される側とはある意味で別の生物だ。これを生存競争と捉えれば、騙される側は次なる進化をしなければならない。本書にはそのためのアドバイスもたくさん書かれているのだが、果たしてこの要求をすべて満たせる「騙される側」がどれだけいることか……。