合理的で優れた経営のトップ企業は、「合理的で優れているからこそ」破壊的な技術革新が起こったときに必ず没落してしまう、という事実。この刺激的でにわかには信じられないような理論を、詳細な論述と豊富な事例を用いてほぼ完璧に例証してしまっているのが本書である。さらに、そういった破壊的技術革新が起きたときには、どのように対処すべきか、という部分も述べられており、恐ろしいほど示唆に富んだ内容になっている。あらゆる「企業」に務める人は、必ず読んでおくべきではないかと思う。
2年前に米国のビジネススクールに留学していたときには、この本の話題で持ちきりでした。どうして優秀な経営者が経営しているにもかかわらず、大企業が新市場参入に失敗するのかをデータを用いてアカデミックに、しかもわかりやすく説明しています。<P>当時、米企業を訪問すると、どの経営者もこの本を読んでおり、話が通じたことが驚きでした。日本の大企業の経営者の何人がこの本を読んでいるのでしょう。<BR>日米の企業の業績逆転の原因はこの辺りにあるのかもしれません。やや古くなりましたが、今でもビジネスマン必読の本だと思います。
タイトルの言葉は、クリステンセンが同書内で使った言葉です。<BR> この本では、現在の市場における成功者が、新しい技術的イノベーションに直面した際に、現在の成功の故に、新しい技術を低く評価してしまい、技術的には開発できる能力を持っていても、それを活用することをしない結果、新しい技術の市場への導入が遅れ、市場での地位を喪失するという「イノベーションのジレンマ」について書かれています。<BR> 新しい技術を低く評価してしまう理由は、1979年に書かれたPfeffer and Salancikの"The External Control of Organizations"という本(組織論研究の古典)があるのですが、この理論に基づいています。これは、簡単に言えば、組織にとって重要な資源を持つものが、組織の行動を支配するという考え方であり、「現在の市場における成功者は現在の市場の顧客にその行動が拘束されている」」というクリステンセンのロジックを支えるものです。<BR> 戦略論研究における意義は、従来のポーターなどの戦略論が外部環境の分析によって構築されているのに対し、組織の内的な認知の側面にふれているものとしてとらえることができると思います。<BR> そして、最後に何よりも読んでいて分かりやすい。これが一番です。<BR> ビジネスマンからアカデミシャン、学生まで、読んで楽しく、かつ、深い洞察が培える一冊ではないでしょうか。<P>!評価が星4つの理由は、バックボーンにつかう理論が、果たしてPfeffer and Salancikのものが妥当だったのか、という学問上の問題からであり、通常読まれる上での評価は文句なく星5つです。