日経新聞に書評が出ていたため購入してみました。<BR>よくある従業員の自己啓発的な著作かと思ったら、大違い。<P>かなり骨太の「仕事」論です。著者のキウーラ氏のことは私もよく知らないのですが、労働哲学と経営学をともに専攻している立場から、論じているだけあって、説得力があります。<P>「仕事」をそれ自体目的として自己実現の契機として見るか、あるいは経済的価値の実現のための単なる手段と見るか、それは各個人によって異なりますが、「仕事」について自分の考えを彼女の主張を使って言語化するためにはお勧めです。<P>また、訳文が読みやすい(かなりの意訳をしているのだと思いますが)のも特徴的です。
サラリーマン生活30年を振り返ると、眠っている時間以外、ほとんどの時間を会社で過ごしてきた。会社=仕事=人生そのものであった。それがバブルの崩壊以降、それまで半ば当たり前と思われていた終身雇用制度や右肩上がりの経済成長が陰りを見せ始め、大企業が破綻するに及んで、仕事の約束が守られず、会社が社員を裏切るケースが散見されるようになった。<P>著者は指摘する。「仕事はもはや我々の人生を保証してはくれない。充実した、幸せな人生を送ろうと思うなら、今からでも遅くはない。仕事プラスα(アルファ)を考えるべきだ」と。不確実性の時代だからこそ、自分の人生にとって仕事とは何かを考える好機かも知れない。その意味で、本書は仕事の歴史や意味論の変遷を含め、幅広い「仕事論」を展開しており、仕事の約束が保証されなくなった中高年サラリーマンはもとより、これから仕事に就こうとする若者にも、仕事の意味と人生における仕事の位置付けを考えるきっかけを与える啓蒙の書である。450頁余りの大著であるが、翻訳も簡潔で読み易い。