タイトルはやや煽り気味ではあるが,NTT分割からソフトバンク参入,その後の大混乱という通信業界の激動について他の類似本に比べると非常に冷静な分析がされている.全体的に用語説明が多少不親切ではあるが,一般的な用語集に載っている範囲に押さえているので業界に詳しくない人でもあまり心配はいらないだろう.<P>全体としては大きく5章に分けられており,Yahoo!BB 躍進の ADSL を中心とするマス向けブロードバンド市場での闘い,やはり BB ホンによって引き起こされた IP 電話への移行によって失なわれる固定電話網の行方,au 躍進により(ドコモ自爆説もあるが)崩れる一強時代,CWC 破綻に見られる法人市場での仁義無き値下合戦,そして迷走する NTT のグループ戦略という構成になっており,ここにも業界専門誌のセンスが光る.<P>物足りない点としては国内での闘いに重点を置くあまりに,海外動向についてほとんど触れられてない点だろうか.新興の DSL 事業者がほとんど壊滅してしまったアメリカや,コンテンツ系ビジネスが順調に(少し乱暴ではあったが)立ち上がった韓国,AT&T の分割によって何がもたらされたのか等,こちらについても興味はつきないのだが.<P>いずれにせよ規制緩和のパンドラの箱は開いてしまったわけで,このまま通信業界が縮退していくのか,それとも放送業界(ここへの言及がないのも不満だが)を巻き込んでさらなる規制緩和へと突き進むのか,見守っていきたいところだ.
電気通信ビジネスの専門誌によるここ数年の激動の電気通信業界の動きを一冊にまとめたもの。「知られざる」というタイトルとは異なり、大部分が新聞等でも報道されているものがほとんどであるが、まとめて読んで見るといかにこの業界の変貌が急であったか思い知らされる。また、随所に業界専門誌らしい鋭い指摘が散りばめられている。例えば、・ソフトバンクは、方法論でマイクロソフトと共通するが、マイクロソフトのOSに相当する基盤を持っていない。・NTTが”すごい”のは、光ファイバー化の具体的な目的がなくても毎年二千億円以上も投資して敷設してきたこと(←痛烈な皮肉)・光ファイバー・サービスのユーザーは解約しないという前提で赤字覚悟のサービスをしているが、この前提が崩れると事業性は一気に崩壊する・光映像サービスは、CATVと大差ない。・ドコモのブランドは、安心感につきる(すぎない)・ドコモが海外投資に失った二兆円は何だったのだろうか。利用料根さげの原資にした方がよかった。 この一冊を読むことでかなりの業界通にはなれます。ただし、電話網が崩壊するのかなど今後の業界がどうなるかは、専門家でも予測はできていないようです。