プロジェクトマネジメントの勘所を小説仕立てでまとめた良書である。勘所とは言っても、中身は科学的なプロジェクトマネジメントの方法論であるから、ビジネス書としての価値も十分に提供してくれている。荒唐無稽な舞台設定と、理想論を振りかざす様々な登場人物に対しては、好き嫌いの分かれるところかと思うが、ソフトウェア開発におけるプロジェクトマネジメントのあるべき姿をストーリーとして提示した著者の所業には、敬意が払われるべきだと考える。問題解決に前向きにであり、冷静沈着に行動を起こせる能力をプロアクティブと呼ぶが、プロアクティブを目指すプロフェッショナルにお奨めしたい一冊である。
ビルという大金持ちが出てきたりして、パロディ仕立てになっているところは、個人的な好みに合っていました。色々なアイデアが出ていましたが、コーディング前に設計品質を確保することで、コーディング段階にプログラムを作り込むようなやり方をなくす提案は、私の持論に合っているので、大きくうなずいてしまいました。
ザ・ゴールに見られる小説形式とその各章に主人公ウェブスターの日記という形でまとめられている101の法則(本当に101かは数えていませんが)をもとにソフトウェア開発プロジェクトについて記述してあります。それにしても物語りは絶対ありえないようなお話になっています。リストラされたプロジェクト管理者(主人公)が美人のスパイにモロビアという国に招かれて、数千名にも及ぶプロジェクトの責任者として、世界中の各方面で著名な人々の意見を聞きながら、あるいは雇いながら成功していく。(その一人がバッグレディーだったりするのも一般離れしている)<br>それぞれの法則はおそらくなんとなく直感的に理解しているものの、それをあらためて明文化していただいた・・・と感じました。ただしここに述べられているのはあくまでも定性的といいますか、直感的であり、実際にその法則に従ってどうやって動くかは別の視点での定義が必要になるのでは?とも一部の法則に関して思います。<br>『致命的なのは知らないことではない。知っているつもりで、実は知らない何かだ。』<br>プロジェクトを推進する上で、やはり風通しのよいチームづくりというのがあると思います。昨今の日本の企業等では『知っていても隠すこと』が多くばれてしまい、その会社の信用を失っているのですが。<br>『管理』に関連している方、一読の価値ありです。