人が人生に「生きがい」を求めるように、企業もその存在に「生きがい」といえる「理念」をもつべきだろう。しかし、もし企業の使命が「儲けること」だけだとしたら余りにも淋しい。<P>企業の使命は、株主への利益還元であるとする考えが近来主流となっているが、米国の主要企業CE0が選んだ「ビジョナリーカンパニー」すなわち理想とされる企業の多くは、その使命として利益追求を第一には掲げていない。<P>それらの企業は長続きする「生きがい」、自分たちが存在する意義に対する確信をもっている。例えば、ジョンソン・エンド・ジョンソンはその使命を顧客、社員、地域社会、に対する貢献と定め、その結果として株主の利益がはかられるべきだとしている。ディズニーは「人々に夢を与えること」をその使命としている。<P> 本書は、このような明確な基本理念をもつばかりではなく、常に「進歩への意欲」を持ちつづけた結果、50年以上の歴史を有し、全米の経営者から尊敬を集めている18社を6年間に渡って調査したレポートである。<P>その分析の結果明らかなことは、「ビジョナリーカンパニー」とは、近来もてはやされている「エクセレントカンパニー」とはいささか趣きが違う。<P>「ビジョナリーカンパニー」は「理念を持ち続けること」と「大胆な挑戦」という厳密にいうならば背反する命題を持続し続けている。その為には、その企業内構成員が、一種カルト的に意思統一されていることが不可欠である。従って、「ビジョナリーカンパニー」の中は、企業理念に心酔し意気に燃えている人にとっては極めて心地良いだろうから、その企業は更に「ビジョナリーカンパニー」としての磨きがかかるという好循環がうまれるだろう。<P>本書は企業も「生きがい」をもつべきという主張から成り立っているから、「ビジョナリーカンパニー」の理念や、カルト的熱狂に埋没できない人たちは、「ビジョナリーカンパニー」から脱落するか、自ら去っていくことを指摘し、その人たちを敗者と位置付けているが、果してそうだろうか。それほど簡単に割り切れるほどには世の中は単純ではないと思うが。だからこそ「ビジョナリーカンパニー」を作ることは難しいといえるのかもしれない。<P>95年の発刊以来、日本でもすでに19刷を重ねた評判の本であり、企業理念、企業改革に関心が高まる昨今、一読されることをお勧めする。
永続する企業の条件とは何か? そうした問いを元に、全米の経営者数百人にアンケートを取り、その結果名前が多く上がった企業18社(P&G, IBM, GE, Sonyなど)と、ほぼ同じ業界でそれなりに成功を収めている企業をペアにし、その差を調べたのが本書。<P>エッセンスを一言で言うと、時代の要諦に対して柔軟に変化する力と、基本理念は変えない、という頑なな信念、この相矛盾するような二つのベクトルが内在する企業が時代を超えて成功している、ということでしょうか。「ORの抑圧」をはねのけ、「ANDの才能」を活かす、と筆者は述べています。<P>やや予定調和的で、理論を述べる際に18社の中から最も都合の良い会社を選んで利用している感は否めませんが、経験のない事業には参入するべきでない、などといったビジネス界の神話を壊していくので、新鮮な感動を覚えます。経営書としては一級の部類に入るでしょう。また、経営者でなくても、働いていれば適用可能な考方が全編を通じてちりばめられているので、誰が読んでも得るものがある本です。
経営理念の重要性を述べた本は世にいろいろとありますが、著者が過去の文献を調べて導き出した結論と文章は大変説得力があります。 第一章中の「崩れた十二の神話」は、今まで信じられてきた“常識”のアンチテーゼとして自説(新発見)を列挙したもので、正否は別としても一読の価値があります。 著者の伝いたいことはシンプルですが、歴史的な文献から導きだされた豊富な事例から学ぶべき点が多く、楽しく読めるでしょう。 ポーターや他の系戦略本に疲れた方で、ミンツバーグに共感する方特にお勧めです。