横山剣氏のエッセイは良い。リズムがあってお洒落で、手が込んでるけどちょっと抜けていて、不良っぽいけどどこか気弱。だから彼が横浜を描写すると、そこで生活しているごく普通な感じがリアルに伝わってくるような気がして楽しい。こういうオトナが増えると、日本の町(街でなく)の暮らしも楽しくなるに違いない。
あの筒美京平さんと並んで、オレが「この人の頭の中は一体どうなっているのか、のぞいてみたい……!」と日頃強く思っている、クレイジーケンバンドの代表取締役歌手にして、自称“東洋一のサウンド・クリエイター”・横山剣さん初の著書。表紙はもちろん、巻頭のカラー口絵からして、なかなかムード出てます(剣さん、普段はiBookを使ってる模様…)。「この曲の舞台/イメージはココ!」というポイントが示された、しっかりデザインされた地図も(本書の中には、剣さんがグニャグニャと直筆された「記憶地図」も数ページありますが、それとはまた別)。随所に載った貴重な写真、そして巻末の詳細なジャケ写つきディスコグラフィー(というか、音盤あるいはカセットとして、02年12月までに世に出た分をフォ!ーした-第2版の段階で-、横山剣音楽仕事リスト)、これだけでもCKB、そして剣さんが気になる人にはマストバイといえるわけですが、何より全体に、剣さん自身が「こういう本を読みたい!」と思った、その通りの本に仕上がっているようで、その点まことにご同慶の至りであります。剣さんの作り出す音楽同様、あらゆる方向にどんどん飛んでゆく本文そのものの面白さにも、きわめて惹き付けるものがあるわけでして、CKBのメンバーをはじめ、剣さんのまわりの人々のユニークさが、なんとも……! 特に「イイネ!」のオリジネーターであるという、剣さんの叔父さんの超然ぶりはスゴい。海水浴に行った(正確には「行こうとしているうち、夜になった」……。)時のエピソードは、まるで不条理コントの傑作のようで!すらあります。必読。
剣さんが理解される良い時代がようやくやって来ました。ファンの方は是非。