医学は細分化され全体像がみえなくなってきている。近年はとくに臓器のなかでもさらに専門化が進んでいるようだ(たとえば脳を研究していても脳の中の前頭葉が専門だ、など)。未知の事柄を解明し人類のあたらしい知識の獲得に貢献する、つまりアカデミックな業績を上げるにはそうしたアプローチは正しい。しかし、実際に患者を診察し、治療する<P>立場の人間は患者さんの病状全体を理解し、なおかつ生活、家庭環境、<P>生活習慣など総合的に理解しないと本当の病気の治癒はできない。(病気の真の原因は孤独ということもありうる)。本書はノーベル賞受賞者でもある医学者カレルが細分化して得た人間の体の知識を再構築して、全体像を描きなおしている。できるだけ正確に記述しようとするカレルの文章には!密な人間の体の構造に対する畏敬の念が感じられる。医者や看護士など医療に携わる人にはぜひ読んでほしい1冊だ
あのカレルの名著が文庫化されたので、電車の中で一気に読んで<BR>しまいました。渡部氏の訳出も見事で、読みやすいように現代風<BR>にアレンジされているのだと思います。いつの世も、人間の生きる<BR>上での、悩み・苦しみなど多いと思いますが、カレルのような理性<BR>的な学者が、現代でも解き明かされていない人間の肉体・精神の<P>とらえ方は、100年も前の本なのに、まったく古くないどころか<BR>寧ろ新鮮ささえ感じさせるのは、たいへん不思議でもあります。<BR>人間の知恵というのは、いつの時代でも同じで、優れたものは不朽<BR>であるということを実感します。